この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

編集は進化し続ける。P-1グランプリもまた進化し続ける。
ポケット・お遍路・障子。
[破]の編集稽古の最後に取り組むプランニング編集術で提案された全プランから選りすぐられたこの三つのテーマからつくりあげるハイパーなミュージアムのプレゼンテーションを競うのが「P-1グランプリ」である。第83回感門之盟「EDIT TIDE」二日目、次なる奔流をめざす51[破]の最終決戦が、潮流渦巻く本楼で敢行された。
出場作品に選ばれた学衆と師範代と師範及び教室の学衆全員が試練へと巻き込まれていく。ノミネートされた喜びで蜂の巣をつついたような騒ぎも束の間、どのようにディレクションしていくか侃侃諤諤のやり取りが夜毎連なり、リハーサルのダメ出しで震えあがり、などなど本番まで青息吐息と不安で眠れない日々が続くのだ。
7回目となった今期の特徴は、一教室に一人ディレクターが入ったこと。中村評匠、原田学匠、吉村林頭三名の梃入れが加わり、今まで以上に相互編集が続く緊張感に包まれた一か月となった。
司会の戸田由香・白川雅俊51[破]両師範は、そんな三教室の交わし合いを見守り続け、ディレクションするごとに進化し続ける変化を肌に感じて今日に臨んだ。
審査員は、編集学校では守破花コースを二周学んで理解を深めプランナーとしてデザインやマーケティングで大活躍の江野澤由美さん、イシス編集学校の初期から参加し続け、放送作家として社会に目を光らせる川崎隆章(デーブ川崎)さん、16[綴]物語講座の師範であり、百貨店の商品開発で新しい価値づくりをしてきた編集ディレクター裏谷恵子さん。いずれもイシス編集学校の格別な「目利き」の三人である。
グランプリを制したのは、四国八十八ヶ所巡礼の「遍路」をテーマにした「即路而真(みちにそくしてしかもしんなり)館」である。プランナーは類児・創児教室の竹内哲也さん。香川県に住まい、香川県を愛し、自ら香川県をライブ編集するコンサルタントだ。このミュージアムの入場者は、白衣(はくえ)・輪袈裟(わげさ)・納札(おさめふだ)・金剛杖(こんごうづえ)のお遍路姿四点セットを身に付ける。ここでは空海の“同行二人”をもどいて、発心、修行、菩提、涅槃の八十八ヶ所の遍路道に肖っていくのだ。しかし単なるお遍路ルートの展示ではない。地元に息づく“お接待文化”というお遍路をめぐる人々にも心を寄せる。自分探しの若者に空海を見て、惜しみなくお接待を提供する姿の意味を参加者に投げかけ、辺土たる辺境を遍路するもう一人の自分の発見を促す。
「プランに対する愛情を感じる」(川崎)、「そのプロジェクトがリアルな生活の中にある切実さ」(裏谷)、「伝えたいという想いが“行ってみたい”を期待させる」(江野澤)、と審査員もプレゼンテーションの具象化を高く評価した。
グランプリに輝いた類児・創児教室には、プランニング編集が結実した『松丸本舗主義』が、激走した参加者全員にイシスキャラメルが贈られた。戦いの後にかみしめる甘さは格別に違いない。
今回のテーマ「EDIT TIDE」にちなんだ特別製イシスキャラメル
(写真:福井千裕)
細田陽子
編集的先達:上橋菜穂子。綿密なプランニングで[守]師範代として学衆を全員卒門に導いた元地方公務員。[離]学衆、[破]師範代、多読ジム読衆と歩み続け、今は念願の物語講座と絵本の自主製作に遊ぶ。ならぬ鐘のその先へ編集道の旅はまだまだ続く。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。