鹿児島とアジアの面影を描く〜小川景一「風景の守破離」展

2023/09/04(月)12:00
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 鹿児島には一風変わったヤツがいる。

 

 男の名は、小川景一。アートディレクター、デザイナー、絵師、唐通事、庭師(修行中)…幾つもの顔を持つ彼は、イシス編集学校九州支所・九天玄氣組の仲間だが、じつは組員とはちょっと違って、誼舟(ぎしゅう)というロール名を持つ。そもそも所属することを嫌う小川だが、鹿児島とアジアを結ぶ稀有な存在である彼を組長の中野由紀昌が離そうとしない。だから、誼(よしみ)で九天に加担してね、と名付けられた。2023年1月に松岡校長に贈った九天の年賀雑誌『卯』の表紙絵も小川の作品である。

 

九天の会合で松岡校長から「龍」の書画を贈呈された(2020年2月/福岡)

 

九天玄氣組の年賀雑誌『卯』(2023年1月25日発行)

 

 小川は中国桂林の大学で12年間、学生にデザインを教えた経歴を持つ。桂林では自ら伝統水墨を学び、帰国後は鹿児島の風景、桂林や旅した東アジアの秘境を描き続けた。

 

 並行してイシス編集学校の10期生でもあった。守はレタス乱打教室(2004年)、破は敢然ナジミーム教室(2005年)と進み、3離の万酔院(2007 年)では、赴任先の中国桂林で「文巻」と格闘、「離論」は洞窟に籠って熱筆をふるったエピソードは語り草になっている。

 

 そんな彼の個展「風景の守破離」展が、12年ぶりに鹿児島市内で開催される。東アジア・日本・心象の“景”を守破離で描いた作品33点が展示されるが、イシス編集学校の守破離も重ね合わせたタイトルとなっている。

 

 小川景一のおもかげのアジア・うつろいの薩摩。堪能できるのは今しかない。

 

 

取材地:錦江湾若尊カルデラ

 

 

小川景一「風景の守破離」展

墨攻彩遊 ~墨で攻め、彩に遊ぶ、和漢の境。

期間:2023年9月8日(金)~9月19日(火)※13日定休

時間:11:00~18:00 ※最終日 17時終了

会場:ギャラリー白樺(鹿児島市泉町14-9   TEL099-226-4518)

http://shirakaba.kagoshima.jp/exhibitions.html

 

〈オープニング〉9月8日(金)18時より

〈鼎談イベント〉9月9日(土)18:00~19:30

・大寺 聡(イラストレーター/日置市在住)

・橋口博幸(愛竹家/鹿児島市在住)

・小川景一

※申し込み不要

 

取材地:中国桂林

 

 

  • 中野由紀昌

    編集的先達:石牟礼道子。侠気と九州愛あふれる九天玄氣組組長。組員の信頼は厚く、イシスで最も活気ある支所をつくった。個人事務所として黒ひょうたんがシンボルの「瓢箪座」を設立し、九州遊学を続ける。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。