この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

“既にこの世界の音楽のありようは、人工知能の統率する音楽浴の世界の似姿になっており、その先には生身の人間を無価値とする無音楽世界が待ち受けているのではないか。
いやいや、まだ自由さ!希望はあるさ!ベートーヴェンやシューベルトやマーラーは、そんな顔をして今日も鳴り響いている。”
- 片山杜秀『ごまかさないクラシック音楽』(岡田暁生・片山杜秀)
音楽には、社会が映り込む。音楽が社会をつくることだってある。
片山杜秀さんは、その交差点を華麗に読み解く音楽評論家で、政治思想家です。
片山さんの著作ラインナップを見ると、音楽と政治の両睨みぶりにクラクラします。
『片山杜秀のクラシック大音楽家15講: バッハからグールドまで』や『ごまかさないクラシック音楽』のかたわらに、『未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命』や『皇国史観』が並びます。『ベートーヴェンを聴けば世界史がわかる』は、まさに片山さんの歴史観を結晶させたタイトルでしょうか。
そんな片山杜秀さんをお招きしての、「ISIS FESTA SP 『情報の歴史21』を読む 第11弾」の開催が決定しました。
打ち合わせのためにオンラインミーティングでお会いすると、片山さんの背後にはCDケースの山脈がびっしり。「CDは軽いので、地震で崩れても心配ないんです」と屈託なく笑う片山さんの後ろで、プラスチックケースの壁がギラギラ光っていました。
「『情報の歴史21』を読む」では「音楽」の切り口から、片山さんの歴史読みをご披露いただく予定です。全10回を開催してきたイベントシリーズの中でも、音楽をテーマにする講義は初めて。耳でも感じる『情報の歴史21』読み、ぜひお楽しみにお待ちください。
「『情報の歴史21』を読む 第11弾 片山杜秀編」は、2024年3月19日(火)開催です(本楼会場およびオンライン配信)。こちらからお申し込みいただけます。
片山さんの最近著は、こちらの二冊。『歴史は予言する』2023/12/18刊行(新潮新書)と、『大楽必易―わたくしの伊福部昭伝―』2024/01/31刊行(新潮社)。
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■日時:2024年3月19日(火) 19:30~22:00
■参加費:リアル参加4,000円(税込4,400円)
オンライン3,000円(税込3,300円)
■会場
リアル参加:本楼(世田谷区豪徳寺)
オンライン参加:お申し込みの方にZOOMアクセスをお送りします。
※リアル参加もしくはオンライン参加のどちらかを選択いただけます。
■定員:リアル参加につきましては先着20名となります。
■参加資格:どなたでもご参加いただけます。
■参加特典:お申込者限定のアーカイブ動画あり(視聴期間:1カ月程度)
■申込締切日:2024年3月18日(月) 12:00まで
■お問い合わせ:front_es@eel.co.jp
*『情報の歴史21』(書籍orPDF)をお持ちの方はご持参ください。
▶︎▶︎▶︎参加お申し込みはこちらから◀︎◀︎◀︎
<片山杜秀さんプロフィール>
政治思想史研究者・音楽評論家
1963年、宮城県生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学。音楽評論家、政治思想史研究者。1980年代から、音楽や映画、日本近代思想史を主たる領分として、フリーランスで批評活動を行う。慶應義塾大学法学部教授。学生時代は蔭山宏に師事。大学院時代からライター生活に入り、『週刊SPA!』のライターなどを務めた。クラシック音楽にも造詣が深く、NHKFM『クラシックの迷宮』の選曲・構成とパーソナリティを務める。『音盤考現学』および『音盤博物誌』で吉田秀和賞、サントリー学芸賞。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞。
山本春奈
編集的先達:レオ・レオーニ。舌足らずな清潔派にして、万能の編集ガール。定評ある卓抜な要約力と観察力、語学力だけではなく、好奇心溢れる眼で小動物のごとくフロアで機敏な動きも見せる。趣味は温泉採掘とパクチーベランダ菜園。愛称は「はるにゃん」。
「これまで」のやり方では、 「これから」を切り拓くことはできない。 「Hyper-Editing Platform[AIDA]」は、従来の当たり前にとらわれずに将来を構想するビジネスリーダーの […]
オーウェルじゃ足りない。スフィフトまでやんなさい。 松岡さんに、いっちばん強烈に叱られたときに、言われたことです。 2023年の、編集工学研究所・松岡正剛事務所・百間の合同新年会でのこと。新年には毎年スタッフたちが「今年 […]
戦争の世紀をどう読み解くか。「『情報の歴史21』を読む 手嶋龍一編」7月23日(火)開催!
戦後、79年。私たちは「戦争の後」を生きていながら、気づかないうちに「次なる戦中」に生きているのかもしれない。7月の「『情報の歴史21』を読む」イベントは、外交ジャーナリスト・作家の手嶋龍一さんをゲストにお迎えします。 […]
科学と社会は切り離せない。「『情報の歴史21』を読む 佐倉統編」6月25日(火)開催!
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プレスリー、ビートルズ、ボブ・ディラン。どんな「時代」がロックを生み、ポップスをつくったか?「『情報の歴史21』を読む 佐藤良明編」5月12日(日)開催!
16歳のプレスリーがメンフィスの街をそぞろ歩いていた頃、サリンジャーの『キャッチャー・イン・ザ・ライ』がニューヨークを舞台に、鬱屈した社会に唾を吐いた。歴史は、絡まり合って時代を作る。 ポップカルチャー研究 […]
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。