あなたの知らない編集学校「地域支所」の世界【ツアー@九州】

2021/04/02(金)09:10
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九州支所「九天玄氣組」の名付け親は、校長・松岡正剛である。この組名にどんなメッセージを込めたのか。15年前の2006年9月23日、松岡校長は旧黒田藩別邸「友泉亭」(福岡市)での発足会でこのように語った。

 


 

 九天玄氣組という名前は案外苦労しましてね。

 九州のこれからをどのように皆さんに感じてもらうかと考えた時、九州における鍵と鍵穴の関係でこれまでなかったものとは、いったいぼくにとってなんだろうと、かなり真面目に考えました。

 

 たとえば、どこからが百済でどこまでが倭だったのか。あるいは新羅も倭もさまざまなものが入り混じってあってできたわけです。どこかでコミュニティが立ち上がり、日本になったり、九州というものになる。そんなマージナルなものをちょっと越える。それは今のような国境や法律的に決められたものではなくて、心のエリアみたいなものがある。そういうものを感じてもらえる組名にしました。

 

 組名については大きく二つ。

 一つは囲碁。碁盤の中心に「天元」があり、まわりには八つの星がある。ここに天元を加えて九つになる。この碁盤に皆が布石を打ちこんでいくイメージです。

 

 もう一つはタオ。北極星を軸に北斗七星はめぐります。その動向を地上に降ろすのが、タオという考え方です。そもそも九州の根本には囲碁のようなもの、タオを感じさせるものがある。この編集学校系から生まれた組にはこのタオを加えようと考えました。

 

 もともと老子や荘子が一番重視したコンセプトは、一つは「氣」、もう一つは「玄」なんですね。ぼくも「玄月」という俳号をつけていますが、最後に黒になる前にすべての色を含む黒のことを「玄」といいます。絵を描くとき、赤がもっとも黒に向かうあたりの色です。お月さんなんかもそういう月を「玄月」といいますが、いわゆるBLACKではありません。

 

 すべてのオーバーレスな色が黒にさしかかろうする際が「玄」。老子は「玄」をもっとも重視しました。「氣」は中国の哲学ですね。

 そのようなタオを、九州という地上に降ろして、そこにもともとある宇宙のようなもの、アジアのようなものを生かしてほしい。いたってコンセプチュアルな名前なんですね。


*発足会の様子を織り交ぜて書かれた千夜千冊

千夜千冊#1157『九州水軍国家の興亡』武光誠

 


 

 あれから15年。松岡校長が組名に託した思いを体現すべく地道に活動を続けてきた九天玄氣組。イシス編集学校の地域支所の中でもっとも熱いコミュニティとして、その名だけは知られるようになってきた感はある。しかし、一体どんなことをしてきたのか。なにゆえに「千夜千冊の九州人もどき」のようなエディティング・キャラクターを発動するまでなったのか(動画あり)。その実態はあまり知られてはいない。

 

 

エディットツアー・スペシャル2021春「一杯のお茶から九州を読み解く方法 ~九天玄氣組と『七茶の法則』」では、そんな九天の知られざる編集活動の一端を「お茶」をキーワードにご紹介する。九州にゆかりがあろうとなかろうと、編集学校の地域支所の一つのモデルを知るチャンス、ご参集あれ!

 

■日時:2021年4月10日(土)15:00~16:30
※終了後、アフター茶会(20分)も予定しています。
■会場:Zoom(お申し込みの方に参加用URL、パスワードをお送りします)

■参加費:1,100円(税込)
■定員:先着30名様
■お申し込み:https://shop.eel.co.jp/products/detail/271

★お茶が重要な鍵となります。お好みのお茶を用意してご参加ください!

 

 

【出演組員紹介】

 

 

◆中野由紀昌 

九天玄氣組 組長(師範:守・破・離・風韻・物語)

瓢箪座 代表

 

松岡正剛が『遊』を創刊した年に生を受け、子を産んだ年にイシス編集学校が誕生した。育児の合間の学びだと軽い気持ちで入門したが、みるみるうちに松岡校長のスペクタクルな編集世界の虜となり、気がつけば今年で21年目。九州支所「九天玄氣組」発足以後、組長として15年、福岡市を拠点に編集学校の地域支所のコンティジェンシー・モデルを構築している。自他共認める瓢箪フェチ。

 

 

 

◆上原美奈子 

九天玄氣組 茶匠(守・破)

Tea-literacy主催・夢見る茶畑主催・白谷清茶堂庵主

 

茶の葉に耳を傾け、尋常ならざる愛を注ぐ九天玄氣組の茶匠。東京生まれだが祖父のルーツは九州にあり。「夢見る茶畑」(島根県吉賀町)を拠点に、茶の栽培から製造まで、茶道教室から地元に息づく茶の文化まで、お茶をとりまく世界を探求し続けている。お茶のためなら中国、韓国、ブラジル、インドネシア、パキスタン、ロシア、ネパールへひとっとび。お茶の編集に人生をかけているのか、お茶に人生を編集されているのか、お茶の化身か。

 

 

 

◆石井梨香 

九天玄氣組 舵星連(師範:守・破・離・花・風韻・多読)

生協職員

 

21守卒門後、福岡で開催された九州参座への参加をきっかけに九天へ。朗らかな笑顔、並外れた目配りと心配りで、組長の暴投もがっちりキャッチ。奇天烈なキャラクターが集結する九天には変化球がつきものだが、球を見失ったり放置することもない。現在は福岡県飯塚市を拠点に、守の番匠と九天活動との両輪でフル回転。松岡校長が贈った書は「援番」、そして「黒かりんとう」!

 

 

 

◆田中さつき

九天玄氣組 舵星連(師範代:守・破・離・花・風韻・多読)

元小学校教師・くらしねま主宰

 

九天発足時は神奈川県藤沢市で小学校の教師をしていたが、2年後に生まれ故郷の大分県耶馬渓へリターン。畑で土と戯れるを日々を楽しむ。その懐の深さに九天組員も甘えまくり、深山絶景にある自宅に幾度も押しかけ、読書会や映画鑑賞会、星空の下で焼肉パーティーを開いては、九天の本来、編集学校の将来を語り合ってきた。「みなことごとくよろし」の精神を九天にもたらす原郷的存在。

 

 

  • 中野由紀昌

    編集的先達:石牟礼道子。侠気と九州愛あふれる九天玄氣組組長。組員の信頼は厚く、イシスで最も活気ある支所をつくった。個人事務所として黒ひょうたんがシンボルの「瓢箪座」を設立し、九州遊学を続ける。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。