この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

事実上、日本初の近代的な株式会社組織といわれる「丸善」。「丸善日本橋店」は明治3年に誕生し、いまも同じ場所にあります。日本橋ではありますが、実は東京駅からも徒歩5分ほどで行ける使い勝手のよい書店です。日本橋・丸の内・銀座などで働くビジネスパーソンが立ち寄ることも多く、幅広い客層に応える品揃えがあります。この丸善日本橋店でも「千夜千冊エディションフェア」を開催中です(~8月中下旬までの予定)。
エディションフェアは、2階エスカレーターのすぐ裏です。上りきったら手すり脇の松岡校長にご挨拶して回りこむと…
ズラリ! 壮観です。東京の千夜千冊エディションフェアのなかでも、1、2を争う充実ぶりではないでしょうか。棚の面陳も平積みもたっぷりあります。
棚づくりをリードしていただいたのは、書籍グループ長の石田健さん。古典文学に造詣が深く、お気に入りのエディションは『物語の函』の石田さん。フェア開催にあたっていろいろとご相談に乗っていただきました。
今回のエディションフェアで石田さんが驚いていたのが、本の売れ方が他のフェアとまったく違うことでした。たとえば、下写真のマルティン・ハイデガー『存在と時間』の作品社の分厚いほう(文庫じゃなくて!)や、萩原秀三郎『稲と鳥と太陽の道』(大修館書店)、西行『山家集』(新潮日本古典集成)などが売れているのだそうです。土曜社版のアルチュール・ランボオ『イリュミナシオン』にいたってはいったん完売したとか。「普通はあまり動かない本が売れていくので、売れ行きを見ながら頻繁に棚を調整しています」(石田さん)。結果として、千夜千冊に詳しい人が奥まで楽しめる本棚ができ上がっていますよ~。
そして、なんといっても石田さんが一番ビックリしていたのが、一番上の画像で持っていたこの本です。田中俊明『古代の日本と加耶』(山川出版社)。なんとすでに7冊売れたのだそうです。「この本が何冊も売れるようなフェアはほかにありません。週末にフェア本をカゴいっぱいに買って行かれるお客様も多く、本好きの方、歴史や哲学が好きな方が狙って来店されている実感がありますね」(石田さん)。
ちなみに、エディションフェアの近くには「21世紀図書館」という棚があるのですが、ここがまた千夜千冊本や関連本だらけでした。合わせてご覧あれ!
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【このエディションフェアがすごい!33】丸善 日本橋店
【このエディションフェアがすごい!30】紀伊國屋書店新宿本店
【このエディションフェアがすごい!29】ジュンク堂書店郡山店
【このエディションフェアがすごい!28】ジュンク堂書店三宮店(神戸市)②
【このエディションフェアがすごい!26】敷島書房(山梨県甲斐市)
【このエディションフェアがすごい!25】ジュンク堂書店大阪本店
【このエディションフェアがすごい!24】ch.books(長野市)
【このエディションフェアがすごい!22】ジュンク堂書店吉祥寺店(武蔵野市)
【このエディションフェアがすごい!19】丸善津田沼店(千葉県習志野市)
【このエディションフェアがすごい!18】ジュンク堂書店三宮店(神戸市)
【このエディションフェアがすごい!17】ジュンク堂書店大分店
【このエディションフェアがすごい!16】ジュンク堂書店難波店(大阪市)
【このエディションフェアがすごい!15】ジュンク堂書店三宮駅前店(神戸市)
【このエディションフェアがすごい!14】長崎次郎書店(熊本市)
【このエディションフェアがすごい!13】スワロー亭(長野県小布施町)
【このエディションフェアがすごい!10】ジュンク堂書店名古屋店
【このエディションフェアがすごい!09】ジュンク堂書店鹿児島店
【このエディションフェアがすごい!07】ブックセンタークエスト小倉本店
【このエディションフェアがすごい!05】りーぶる金海堂クロスモール店(宮崎市)
【このエディションフェアがすごい!03】ジュンク堂書店池袋本店
【このエディションフェアがすごい!02】ジュンク堂書店福岡店
千夜千冊エディション20冊突破記念フェア開催中!
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米川青馬
編集的先達:フランツ・カフカ。ふだんはライター。号は云亭(うんてい)。趣味は観劇。最近は劇場だけでなく 区民農園にも通う。好物は納豆とスイーツ。道産子なので雪の日に傘はささない。
♪♪♪今日の舞台♪♪♪ 踊り部 田中泯 「外は、良寛。」 田中泯さんの踊りには、「いまここの生」を感じました。松岡正剛さんの『外は、良寛。』(講談社文芸文庫)のフラジリティには撃たれ、杉本博司さんの設えに […]
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。