この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

6月26日、神戸・三宮でも「知祭り」がスタートしました。ジュンク堂書店の三宮店、三宮駅前店が千夜千冊エディションフェアに名乗りを上げ、先にお囃子を鳴らしたのが三宮駅前店です。フェア開催期間は7月31日(土)まで。
特徴は千夜千冊エディション20冊と松岡校長の本10冊の、文庫と新書に絞り込んだ選書。浦田麻理店長はその理由をつぎのように話します。「当店のような一般書店では、ハードカバーの専門書はなかなか手にとってもらえません。松岡正剛さんの著書は専門書の中でも強い販売力をもっています。フェアも文庫・新書の形態であればいろんな人に手軽に親しんでもらえると考えました」
もうひとつは、入社4年目の西川真由さん(文庫担当)をフェア担当に抜擢したことです。「千夜千冊エディションは発売のたびに売れていたので、フェアもいけると思いました」。エディションでは『本から本へ』や『大アジア』、新書では『日本問答』『江戸問答』や『日本文化の核心』が中高年世代によく売れていたとのこと。今回のフェアはそうした売れ筋を選んでいます。
「一人の著者の本を20冊も扱うのは初めての経験。フェア棚に並べることで、これまで興味のなかった人の目に触れ、手にとってもらうのが目標です」と語る西川さん。自身もフェアを機会に千夜千冊エディションの世界に関心をもち始めた様子。新しい読者層の獲得にむけた若い書店員さんの挑戦を応援していきます。
三宮はJR、阪神、阪急、ポートライナー、地下鉄などの路線が集まる神戸市最大の交通ターミナル。
各路線の三宮駅から東へ歩いて1~5分。食品・ファッション・雑貨・リビング用品・レストランなどの店舗が入る三宮オーパ2(サンシティビル)の7階にジュンク堂書店三宮駅前店がある。サンシティビルはポートライナー三宮駅やミント神戸と歩道橋で直結していて、移動がスムーズにできる。
ジュンク堂書店三宮駅前店はワンフロアで店舗を展開。文芸、文庫・新書、人文、芸術、実用、雑誌など種類ごとの棚が大きな通路側に向けて並んでいて見通しがよい。仕事や学校帰り、ショッピングのついでに気軽に立ち寄れる立地の良さで幅広い顧客層をもつ。
エスカレーターのある通路側のフェア棚で見つけた手作りPOP。お客様に刺さる書店員さんの言葉と書体と形状が目を引く。
窓からは神戸中心部の景色が見える
文庫のフェア棚にずらり並んだ千夜千冊エディションと解説POP。その下には松岡校長の著書の中から手に取りやすい文庫・新書を10冊選んで並べている。
文庫棚の端、通路側に近いところにある千夜千冊エディションのフェア棚。「知祭り」のパネル貼りポスターが目印。
『知の編集工学』の横にはイシス編集学校のミニPOP
三宮駅前店のエディションフェアを一任されている西川真由さんのお気に入りは『サブカルズ』。「マンガやアニメが好きで2.5次元の舞台俳優のおっかけもしてる」というから筋金入りのサブカルファン。中学・高校時代は新選組に夢中になり歴史小説を読み漁ったそう。浦田麻理店長からは「専門的な硬い本のフェアを経験することで引き出しを増やしてほしい」と期待がかかっています。
ジュンク堂三宮駅前店をレポートした小路。残したい日本のイメージと大和ごころを探して『面影日本』を手にとりました。
Back Number
【このエディションフェアがすごい!15】ジュンク堂書店三宮駅前店(神戸市)
【このエディションフェアがすごい!14】長崎次郎書店(熊本市)
【このエディションフェアがすごい!13】スワロー亭(長野県小布施町)
【このエディションフェアがすごい!10】ジュンク堂書店名古屋店
【このエディションフェアがすごい!09】ジュンク堂書店鹿児島店
【このエディションフェアがすごい!07】ブックセンタークエスト小倉本店
【このエディションフェアがすごい!05】りーぶる金海堂クロスモール店(宮崎市)
【このエディションフェアがすごい!03】ジュンク堂書店池袋本店
【このエディションフェアがすごい!02】ジュンク堂書店福岡店
千夜千冊エディション20冊突破記念フェア開催中!
最新開催店舗情報はこちらへ▼
小路千広
編集的先達:柿本人麻呂。自らを「言葉の脚を綺麗にみせるパンスト」だと語るプロのライター&エディター。切れ味の鋭い指南で、文章の論理破綻を見抜く。1日6000歩のウォーキングでの情報ハンティングが趣味。
多読ジム出版社コラボ企画第二弾は工作舎! お題本はメーテルリンク『ガラス蜘蛛』、福井栄一『蟲虫双紙』、桃山鈴子『わたしはイモムシ』。佐藤裕子、高宮光江、中原洋子、畑本浩伸、佐藤健太郎、浦澤美穂、大沼友紀、小路千広、松井路 […]
<多読ジム>Season10・春の三冊筋のテーマは「男と女の三冊」。今季のCASTは中原洋子、小路千広、松井路代、若林信克、増岡麻子、細田陽子の面々だ。男と女といえば、やはり物語。ギリシア神話、シェイクスピア、メリメ、ド […]
<多読ジム>Season09・冬の三冊筋のテーマは「青の三冊」。今季のCASTは小倉加奈子、中原洋子、佐藤裕子、高宮光江、大沼友紀、小路千広、猪貝克浩、若林信克、米川青馬、山口イズミ、松井路代。冊匠・大音美弥子と代将・金 […]
漢文の授業はチンプンカンプン。返り点なるものに翻弄されてどう読めばよいのかわからない。教科書を読み上げる教師の声だけが頭の中をむなしく通り過ぎていき、退屈で憂鬱で夢うつつな時間でしかなかった。心の底では一生お付き合いす […]
ヒトの遺伝子には、太古の昔から未知の国を放浪した記憶が刻まれているのかもしれない。その面影がふっとよみがえり、無性に旅をしたくなるときがある。 2020年、新型コロナウイルスの感染を避けるために移動が制限され、国内は […]
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。