編集ビタミンが利くぜ!寺田充宏のエディット檸檬ツアー

2020/03/10(火)21:30
img JUSTedit
 レモンではなくて檸檬。米津玄師ではなくて梶井基次郎。
 
 雨降りしきる火曜日夜のエディットツアー。編集レクチャーをすれば、イシスでも三本の指に入る名手・寺田充宏師範の登場である。
その寺田が用意したのが『檸檬』梶井基次郎のテキスト。本屋に檸檬を爆弾として仕掛けたというメタファーに肖って過激な、思い切った編集をしてほしいという寺田の願いが込められている。そしてもう一つ、世間が騒がしい中、檸檬でビタミンをという寺田の茶目っ気もある。
 
 雨、新型肺炎といった悪条件にも関わらず、寺田の編集講義の噂を知ってか知らずか欠席者もなく7名全てが揃った。
この参加者たちは幸運だ。もちろん寺田のエディットツアーが体験できたということもあるが、さらに編集術と読書術を重ねての編集ワークショップで一粒で二度美味しい。名付けて「見方を変える編集読書術」。
 
 「結晶化読書」ワークショップでは、短編小説『檸檬』を読んで、3つの文章を分節化して抽出。そして『檸檬』全体を何かに見立ててみてもらう。「檸檬は夜の街の色鮮やかな錯覚である」「檸檬は幻想に耽るためのスイッチである」。いかがだろうか。つづく「かりもの協奏」ワークショップでは、『檸檬』で選んだキーワードをフィルターにして、持参したお気に入りの本をざっと読み直し、新たな「読み」を三位一体で構成した。
 
 これだけで、エディットツアーを体験したくなった人も多いだろう。毎回、新たな編集ワークショップをつくりだし、チャレンジを続ける寺田。
次の野望はイシス編集学校の中に新たなリアルコーチを育成する講座の立ち上げを目論んでいる。イシス20周年を記念するプログラムにしたいと腕まくりしている。
 
 次回のエディットツアーは3月20日。ナビゲーターはクラシック音楽の作編曲家である上杉公志師範代が登壇する。音楽と編集工学がどう重なるのか、意外な組み合わせに注目されたい。
  • 吉村堅樹

    僧侶で神父。塾講師でスナックホスト。ガードマンで映画助監督。介護ヘルパーでゲームデバッガー。節操ない転職の果て辿り着いた編集学校。揺らぐことないイシス愛が買われて、2012年から林頭に。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。