ジングル・ベルは、ジャジャジャ・ジャーン【Edit ツアー】

2020/12/25(金)09:41
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触れられない。集えない。歯止めがかからない。
こんなとき…ベートーヴェンだったらどうするだろう?

 

ベートーヴェンと編集工学を重ねるツアー

 

ここ3年、クリスマスのEditツアーは上杉公志ナビが、得意の音楽談義を交えた編集ワークでもてなしてきた。2020年はオンライン・Editツアーとなる。上杉が選んだテーマはベートーヴェン。生誕250年である。しかし選んだ理由はそれだけではなかった。コロナの影響で第九がホールに流れない年末、「こんなとき彼ならどうする?」との思いが浮かんだのだ。

 

オンライン参加者との間で多奏に交わす

 

ベートーヴェンといえば「ジャジャジャ・ジャーン」の交響曲第5番「運命」。
250年にわたり世界中の人に知られるこの曲も、当時には「ない」作り方だった。
音楽的には、和声学でいう「ドッペル・ドミナントの七の根音省略形の下方変位」を突然使うなど、王道を外れまくっていた。また当時は教会で主に用いられ、宗教的なイメージを持つトロンボーンを初めてオーケストラに使った。
これらのチャレンジは、宗教改革をへてフランス革命がウィーン会議に至り都市というものが生まれる時代社会の中で、新しい音楽の可能性をつくることでもあった。
当時の世に「ない」方法を連打した破格の彼が、2020年の世界にいたら何を考えただろうか。それが、上杉の思いだったわけだ。

 

「ジャジャジャ・ジャーン」は、編集の型でいうステレオタイプ(典型)だ。ツカミ、ぱっと見、流行りものである。では、その違いが何だったのか、音楽の作法としてきちんとプロトタイプ(類型)してみる。奥にある背景・歴史・本来のアーキタイプ(原型)を重ねて見る。すると、生まれる必然や改革の動機が立体化する。

 

「ステレオタイプは見えやすく、アーキタイプは見えにくいんです」と上杉が補うと、参加者から「日頃接している就活生も自分の可能性を表層的にステレオタイプだけ見ているのかもしれない」など連想が次々動いた。見えないアーキタイプを仮設するだけで、ステレオタイプでかたまったメロディーが重奏ゆたかに響きだす。

 

かくして、2020年の苦しいクリスマスは、ベートーヴェンの方法に励まされて来たる可能性の音に耳を澄ますジングルベル・ツアーとなった。「方法絵本」を丁寧にめくるような上杉の極上ナビのおかげである。

 

参加者から名回答もつぎつぎ飛び出した。この「しわ」の大転換に肖りたい。

 

<お題> ベートーヴェンとサンタクロースをつなげてください。

 

  

 

<回答> 眉間皺のベートーヴェン、笑い皺のサンタクロース

  • 佐々木千佳

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。