この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

多読アレゴリアWEEK開催中!!!!!
12月2日のオープンに向けて、全12クラブが遊刊エディストを舞台に告知合戦を繰り広げます。どのクラブも定員に届き次第、募集終了です。すでに締切間近のクラブもいくつかあるので、希望のクラブに絶対入りたいという方はお早めの申込をオススメします!!!!!
商店街を歩いていると大きな音でヒット曲が聞こえてきた。
学校の音楽の時間、教科書に有名な作曲家が並んでいた。
カラオケに行って最新の曲とかなり昔の曲を知った、皆で歌った。
音楽は、歌は、私たちの生活において、とても身近なものです。それが聞こえてこないという日は一日もないでしょう。
家族や友人の歌うの直接聞くということもあれば、それが届くまでの間にたくさんの工程を経ることもあります。
作詞・作曲する人がいて、編曲する人がいて、演奏する人、それを録音する人がいて、さらにそれをミックスする人がいて、音を整えて、ファイルにしてダウンロードやストリーミングができるようにしたり、ジャケットを印刷して工場でCDというパッケージにして、さらに物流会社のトラックが運んで店頭に並べたりして、時には雑誌に取り上げられたり批評家がコメントするのを読んで、最後にあなたがその音楽に出会って聞く。
あなたはその最後のパートを受け持っているのだ、と意識することはなかなかないものです。
作曲の仕方、歌い方、CDのマスタリングの仕方にも作法や流儀があって、ということも普段はあまり思い出さないことです。
それ以前にひとつの音をとっても、なぜその音がそのように聞こえるのか。なぜある種の音は心を落ち着かせ、ある種の音は物悲しい気持ちにさせるのか。その音の組み合わせが、多くは意味をなさないノイズとなり、いくつかはメロディとなり和音となり、また聞きたくなる、記憶・記録したくなる。それはなぜなのか。
聴覚は五感のひとつとして、日々大量の情報を受け入れています。その多くが整理されないまま通り過ぎてゆきます。
一方で、歌や音楽は人間だけのものではありません。
チリ出身の生物学者ウンベルト・マトゥラーナ、フランシスコ・バレーラによる『知恵の樹』 にてこんな一節があります。(ちくま学芸文庫 p.229-230)
人間以外の生物がおこなうコミュニケーションの、ある美しい例は、ある種の鳥たちの歌だ。たとえばオウムとそれに近い種の。
これらの鳥たちは、ふつう濃密な森に住み、個体相互の視覚的接触はほとんどあるいはまったくもたない。こうした条件下ではつがいのカップルは、共有する歌を作ることによって、形成され、行動を調整する。
(中略)
このスペクトログラムを見ると、それぞれの鳥がまとまったメロディを歌っているように見える。しかしほんとうはそうではなく、このメロディはじっさいにはデュエットであるとしめすことができるものだ。
カップルのいっぽうがひとつのフレーズを作り、それをいっぽうが続けてゆくのだ。
そう、鳥たちにもまた聴覚があり、歌うことで意思の疎通を図ります。このこともまた、よく知られてはいないことです。
ひとつの音、ひとつの歌、ひとつの音楽・曲をとっても僕らには知らないことばかりです。
それを紐解いていくことで音楽の聞き方が変わる、新しい視点で音と向き合う、歌い方の選択肢が増える。
それがあなたの生活をより豊かなものとする。『音づれスコア』が目的とするのはそういったことです。
●1910年に最も歌われた歌とは?
●ジョン・ケージの「4″33」とは?
●あなたの理想とするプレイリストとは?
11週間を音、歌、音楽の3つのタームに分けて、実際に音を出してみよう、歌ってみようというお題もあれば、調べてみよう、考えてみようというお題もあります。卒業制作をつくってアワードも決めようということも考えています。
それだけではなく、最近聞いた音楽や見に行ったコンサートの話なども気軽にできればと思います。
12月からの3ヶ月、ご一緒しましょう。お待ちしています。
多読アレゴリア「音づれスコア」
聴匠:岡村豊彦
響師:瀬尾真喜子
譜匠:上杉公志
多読アレゴリア「音づれスコア」
【定員】20名
【開講日】2024年12月2日(月)
【受講費】月額11,000円(税込)
*2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。
1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、そちらをご利用の上、
2クラブ目以降をお申し込みください。
【開催期間】2024冬 2024年12月2日(月)~2025年2月23日(日)以後順次決定
お申し込みはこちらから
https://shop.eel.co.jp/products/detail/765
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文:岡村豊彦
アイキャッチ画像:瀬尾真喜子×山内貴暉
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。