【多読アレゴリア:軽井沢別想フロンティア②】灰色の背広を脱ぎ捨てて

2024/11/26(火)17:00
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好評につき、多読アレゴリアの申込受付を12月1日(日)まで延長しました。なお、どのクラブも定員に届き次第募集終了です。すでに締切間近のクラブもいくつかあるので、希望のクラブに絶対入りたいという方はお早めの申込をオススメします!!!!!


 

 「時間がない」「お金がない」。SNSやメールの通知に追われ、スマホを片手にこんなセリフを繰り返していませんか?便利なはずのテクノロジーが、いつしか私たちの時間を吸い取る時間泥棒になっているのかもしれません。

 

 灰色の背広を着た時間泥棒が登場するミヒャエル・エンデの名作『モモ』は、このような現代人の状況を象徴的に描き出し、時間の使い方に警鐘を鳴らしています。灰色の男たちは「時間を貯める(=節約する)」ことの重要性を説きながら、実は人々からその時間を奪い去り、効率や成果に追われる日々をもたらします。私たちも、この物語のように、知らないうちに消費や情報の渦中で時間を奪われてしまっていないでしょうか。

 

 19世紀の思想家ヘンリー・ソローが記した『森の生活』もまた、物質的豊かさから離れ、自然の中で暮らす「本当の豊かさ」を教えてくれます。ソローが語る「簡素な生活」「自然との対話」は、『モモ』が描く「時間を取り戻す旅」と深く通じています。

 

 軽井沢は、こうした静かな時間と自然の豊かさを味わえる場所です。観光地としての派手さだけでなく、ソローのように「消費に追われない生き方」を実践する機会が得られます。たとえば、朝の森を歩きながら風や鳥の声に耳を澄ませたり、湖畔で静かに本を読み、自然と心が共鳴するひととき。また、浅間山を見上げながら田畑を耕し、時間をかけて夕餉の支度に勤しむ夕べなど、心の静寂を取り戻せる時間に満ちています。

 

 さぁ、軽井沢の時間の中で、自分だけの「トポス」(特別な場所)を探してみましょう。もちろん、軽井沢在住でなくても構いません。自分の想像の中で、「別想・軽井沢」を歩いてみたっていいのです。

 

 たとえば、歴史ある中山道を自分ならどういう歩き方をするだろうかと空想してみたり、堀辰雄の『美しい村』を読み返しながら、自分なら「水車の道」のどんな景色に感動するかに想いを巡らせてみたり。本を片手に、心が赴くままに歩きながら、大切な「トポス」と出会ってみる。そのひとときが、忙しい日常に置き忘れていた「本当の自分」を呼び覚ましてくれるかもしれません。

 

 灰色の男たちが奪おうとした「無駄な時間」こそが、私たちの人生で最も豊かな時間です。軽井沢で、『モモ』のメッセージを胸に、自然や文学、歴史を楽しみながら、消費を超えた新しい時間の過ごし方を見つけてみませんか?

 


多読アレゴリア【軽井沢別想フロンティア】
【定員】20名
【開講日】2024年12月2日(月)
【申込締切日】2024年12月1日(月)
【受講費】月額11,000円(税込)*リアル開催の座(イベント)は別途会費制

*2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。
1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、そちらをご利用の上、2クラブ目以降をお申し込みください。

【開催期間】2024冬 2024年12月2日(月)~2025年2月23日(日)以後順次決定

お申し込みはこちらから
https://shop.eel.co.jp/products/detail/765


文:浅羽登志也

アイキャッチ画像:軽井沢別想フロンティア×山内貴暉

 

 

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大河ばっか!②:「大河ばっか!」の源へ(物語マザー編)

大河ばっか!③:「大河ばっか!」の源へ(温故知新編)

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身体多面体茶論①:「身体」を斬る(導入編)

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    編集的先達:松岡正剛
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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。