この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

間もなく桜の開花シーズンですね。自然の美しい風物を示す花鳥風月の内、優しい色をした花によって生命の息吹が伝わってきます。ニュースを確認すると東京の開花は3月24日の予報のもよう。一足先の15日にイシス編集学校における修了をお互いに寿ぐ場・感門之盟がスタートしました。これまでの学びを振り返る学衆(生徒)たちの息づかいが伝わってきますね。
豪徳寺駅近くにある編集工学研究所の「本楼」で行われた感門之盟の開会にあたり、学長・田中優子からのメッセージが届きました。速報として会場の様子を交えながらレポートいたします!
学長の田中は基本コースの「守」、応用コース「破」、世界読書奥義伝「離」を受講済みです。さらには技法研鑽コースである物語講座なども受講していました。イシスの学びは単に知識を増やすだけでなく、見方を広げるだけでなく、まるで仏教の開祖ブッダが縁起の自覚をしたような、田中が言うところの「悟り」っぽいモノを得ることができます。世間一般の学校とはひと味もふた味も違うのです。
学びの場「教室」では師範代(教師役)が学衆(生徒役)へ一方的に教えるのではなく、学衆からの回答などのフィードバックによって師範代も学びを受け取る相互編集が行われていることを田中は強調していました。
中世のような帝国化やマネーさえあれば何でもできるとの思い込みが進んでいる世界と、身近な社会の中で生きる個人の間を二項対立として扱おうとすると、個人の無力さに対して絶望に陥ることがあります。そのような状況から抜け出すために「多元性」という第三の道が生まれつつあると田中は紹介しました。「複雑系」から刺激を受けながら発展している「多元性」は情報を関係づけながら、それらに新たな命を吹き込んでいます。イシスでは教室での稽古を通じて、2つ以上の知に対して文科系と理科系を区別せずに対角線を引く、今までの社会に無かった関係の学問を学んでいます。
イシスでの学びを通じて小さなコモンズやコミュニティを形作ることも将来できるようになるでしょう。
学長の田中はメッセージの中で度々「編集を続けてください」と強調していました。「守」では思考の武器、表現の食器、発想の楽器となる38個の編集術がありましたね。その先にある応用コース「破」では、相互編集の方法を型稽古で学ぶチャンスに出会えます。
学長メッセージにリアルタイムで触れたみなさん(さらに本記事を読んだ方も)、編集学校入門前の状態に巻き戻って、元の居場所へと帰還しないようにしましょう。
<写真/文>畑本ヒロノブ、ただし最後の写真のみ福井千裕が撮影
畑本ヒロノブ
編集的先達:エドワード・ワディ・サイード。あらゆるイシスのイベントやブックフェアに出張先からも現れる次世代編集ロボ畑本。モンスターになりたい、博覧強記になりたいと公言して、自らの編集機械のメンテナンスに日々余念がない。電機業界から建設業界へ転身した土木系エンジニア。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。