出現!ネオバロックへ向かうストリートピアノ【第84回感門之盟】

2024/09/16(月)18:30
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感門之盟の受付からカフェを通ってスタジオまでは長いパサージュがある。ネットワンシステムズ社のnetone valleyは広いのだ。その途中に、黒いアップライトピアノは置かれていた。休憩時間となると他のロールから着替えたピアニストがふたり現れ、連弾を始める。ふたりの指が絡むように動き、奏でる軽快なリズムに、行き交う人は立ち止まり、引き込まれていった。曲は、近代フランスの作曲家モーリス・ラヴェルの『マ・メール・ロワ』。17-18世紀の作家の童話を下敷きにした連弾作品であり、童話から音楽へとメディア編集させた、親しみやすくも緻密なラヴェルの名曲の一つである。演奏者は同じ音楽大学の出身で、ひとりは遊刊エディストのJUSTライターを束ねてきた上杉公志、もうひとりは16[離]を退院したばかりの瀬尾真喜子だ。

 

 

実は、ピアノの音は、「多読アレゴリア」に誕生するクラブのひとつ、「音づれスコア」への勧誘の調べであった。「楽譜が読めなくてもいい。楽器が弾ける必要もない。必要なのは、音楽への関心とフェチだけ」と、クラブの発起人である上杉と瀬尾が誘う。

 

 

読書と演奏は似ているのかもしれない。本に書かれる文字を読むのと同じように、譜面の音符を指で音にして、社会の切り口から音楽の効用と高揚、またマリアージュとマッチングの秘密に迫ろうとする。ピアノの周りは、その鋭く柔らかな手腕を魅せる場面となっていた。

 

そもそも「音づれスコア」は上杉が松岡校長からいただいた教室名「おとづれスコア」に肖るもの。「おとづれスコア」には、遠い昔に「鐸(さなぎ)」が鳴るのは神の「おとづれ」を知らせるものと考えられていたように、鐸のように学衆からの回答(=おとづれ)にスコアリングしていきたいという思いが込められているのだという。

 

マラルメの火曜会のように、音楽を媒介に、参加される方々のフェチもシェアしながら、ポリフォニックな「音楽×編集」のスコアが生まれるような場にしていきたい。

とは、上杉の言だ。

 

訪れや便りをスコアにして五線譜に乗せては場を動かす。そんな魔法を使ってみたいと思ったら、「多読アレゴリア」へお申込みの上で、イシス随一の紳士と淑女でもある名ピアニストのふたりが待つ「音づれスコア」の門を叩こう。話や音楽にゆるりと耳を傾けるだけでもいいし、時には思い切って語り尽くすような多様な参加が歓迎される、クラブというよりも「サロン」のイメージをもつ場がそこにあるはずだ。

 

 

 


多読アレゴリア「音づれスコア」
【定員】20名
【開講日】2024年12月2日(月)

【受講費】月額11,000円(税込)
*2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。
1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、そちらをご利用の上、
2クラブ目以降をお申し込みください。
【開催期間】2024冬 2024年12月2日(月)~2025年2月23日(日)以後順次決定

お申し込みはこちらから
https://shop.eel.co.jp/products/detail/765


 

(動画撮影・編集:松原朋子)

  • 安田晶子

    編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。