この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

感門之盟Day2が開幕するほんの数時間前、50[破]柑橘パイディア教室の面々は本楼近くのある場所に集まった。突破式に先立って、教室の仲間でオススメ本の交換をしようというのだ。
感門之盟では師範代に先達文庫が贈られる。講座全体をとりまとめる学匠と校長の松岡によって選本され、師範代の「これまで」と「これから」を照らす本として贈られる。
「学衆のみんなにも本を贈りたい」「イシスらしい交換を」
そんな得原師範代の想いから、本の交換というセレモニーの場が設けられた。選本のテーマは「破」。ルールは表紙の裏の見返しや扉にメッセージを記すこと。先達文庫さながらに言葉が書き込まれたその本は、贈り手からの「編集的背景」のおすそ分けだ。得原師範代は、『遊 稲垣足穂・野尻抱影追悼号』を用意した。この選本の背景には、50[守]の感門之盟で校長から受け取った先達文庫『星の文人 野尻抱影伝』(石田五郎/中公文庫)がある。
それぞれに持ち寄った本を誰が受け取るか。手作りのくじ引きで決めていく。パイディアな交感は、それぞれの背景を持ち寄った編集モデルの交換となった。
得原師範代は突破式で学衆に向かってこう語った。「破の稽古の苦しさは、本当の世界を知ったことの証です」。身にまとったTシャツの背中には、『遊 稲垣足穂・野尻抱影追悼号』の表紙に添えられた言葉が埋め込まれていた。
「われらはいま、宇宙の散歩に出かけたところだ」
阿部幸織
編集的先達:細馬宏通。会社ではちゃんとしすぎと評される労働組合のリーダー。ネットワークを活かし組織のためのエディットツアー も師範として初開催。一方、小学校のころから漫画執筆に没頭し、今でもコマのカケアミを眺めたり、感門のメッセージでは鈴を鳴らしてみたり、不思議な一面もある。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。