ニューお題、留まることなくNEXT STAGEへ【79感門】

2022/09/19(月)06:00
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 第79回感門之盟の直前、学林局からのお題がイシス中に放たれた。

守の編集稽古38番に加えたい「お題」を考えてみましょう。この先どんな未知へと向かいたいか?ぜひ「新お題」に想いを込めてください。

 編集稽古を身体に通したことがある者であれば見過ごせないはずだ。大切にしたいものだけに、畏怖の念を感じて手が出なかった面々も多かったことだろう。

 集まった「39番目のお題」の選りすぐりを紹介するパートは「ようやくニューお題コーナー」と名づけられ、感門之盟の2日目に49[守]師範の大澤靖永、学林局律師の八田英子により、勇猛果敢な5人の挑戦者によるお題が紹介された。この二人が揃って、単なる紹介で終わるはずがない。ところどころ校長、松岡正剛も交じり、愛情いっぱいの問感応答返が立ちあがった。

 

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【鏡のステキ】

 49[守]八段プラモデル教室学衆 武内一弘さん   

  

 「鏡というツールに着目したのはとてもいい。より発想を膨らませていくためには、編集方針を想定しておくことが必要」と大澤の辛口指南が飛んだ。武内のお題は、普段は覗き込む鏡を「の」の字的に転換して、自分が鏡になって世の中を見てみようというものだ。校長からは「鏡がなぜ映るのか?ジャック・ラカンはなぜ鏡像というのか?もっと深められるよ」と新たなお題も課された。

 

【秘め事すっぱ抜き】

 48[破]点閃クォート教室学衆 山内貴暉さん

  
 はにかみと共に「幼い頃にポケットにしまい込んでいた一番のお気に入りはゴミ箱から拾ったプラチナ万年筆のカートリッジ」と「秘め事」を明かしながらお題を紹介したのは山内だ。既に林頭の吉村から指南を受けて完成したものだった。「幼い頃のこだわりに編集の原点がある。ネーミングだけでなく手続きについても考えてみるとよい」と大澤が更なる指南を加えた。「いいお題だよ」と校長の顔がほころんだ。

 

【絵画の中の探検】

 48[破]点閃クォート教室師範代 大濱朋子さん

   
 「この絵の中にどのようなものが見えますか?皆さん、あげてみてください」と大濱が問いかける。積み木、おたまじゃくし、フクロウ、樹皮、、、と参加者が意気揚々と回答をあげた。取り出した情報を型で分けて繋いで物語に仕立てていくところまでがこのお題。編集学校には未だないビジュアルお題にチャレンジした大濱に、大澤から「注意のカーソルの動きのトレースをビジュアルで取り組むのは有効」と称賛が贈られた。

 

【有り物借り物三品フリマ】

 21[守][破]てれすこホルモン教室、23[守][破]万遊クラウド教室、

 28[守]キャラバン海豹教室師範代 大沼友紀さん

  
 「49[破]の『ちちろ』、50[守]の『吉里吉里』、私の『ススキ』の3つを合わせて、秋の夜長を過ごすセットをフリマします」と大沼。49[破]の教室名50[守]の教室名、自分が考えたもの、3つを掛け合わせて、フリマへの出品するというお題だ。感門之盟初日に発表された教室名を早速借りる大沼のカマエにのり「イシスでは借りることを推奨。仲間の回答をどんどん借りて、別の場所で返す循環をつくっていこう」と八田が集った学衆たちを煽った。

 

【教室風味の本だし】

 48[破]番匠 野嶋真帆さん

  
 「外国人がドイツ語と初めて触れたときの驚きを書いた『エクソフォニー』(多和田葉子著)にヒントを得て」という野嶋のお題は、教室名を扱う。出会った当初のビビッドな印象を型で取り出して、本の構造に当てはめる。不思議な教室名から動き出すプロフィールを掴まえて、メディエーションした本からは新たなイメージが浮かぶはずだ。
 千夜千冊エディション『読書の裏側』を見せながら発表した野嶋に、校長からおまけお題が出題された。「『読書の裏側』の口絵に潜んでいるお題わかる?この一冊だけ変えているんだよ」。皆さん、お分かりだろうか?

  

 

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 イシスでは、お題には3つのタイプがあると言われる。「与えらえた問題」、「発見する問題」、「作り出す問題」である。編集稽古は、与えられたお題に応えていくことからスタートする。しかしながら、いつまでもそこに留まるのではもったいない。コーナーの最後に、大澤と八田が新しいお題づくりのヒントを提示した。「卒門や突破に向かう過程で、プロフィールがたくさん動く。ターゲットにたどり着かなかったものほど大切にしてほしい」と異口同音に話す。その残念にこそ、新たなお題の仮説が潜んでいるからだ。更に「イシスが培ってきた”人”財産を活かせば、それぞれが『わたし』の地を増やしていける。自分事に留まらないお題をつくっていこう」と八田が促せば「お題の中に全てがある。稽古をしながら、常に自分と社会を接続して考えておくこと」と大澤もヒントを大盤振る舞いした。

 

 この秋、イシス編集学校は、ようやく記念すべき50[守]を迎える。人生や仕事にはもちろん、才能を大きく磨きあげるためにも「お題」は必須。実は、私たちにとっての「お題」は既にそこかしこに潜んでいる。あとは見つけにいくだけ。50[守]には、あなたの注意のカーソルの向きを変えるべく、38のお題、いや39番目のお題も待っている。

  • 阿曽祐子

    編集的先達:小熊英二。ふわふわと漂うようなつかみどころのなさと骨太の行動力と冒険心。相矛盾する異星人ぽさは5つの小中に通った少女時代に培われた。今も比叡山と空を眺めながら街を歩き回っているらしい。 「阿曽祐子の編集力チェック」受付中 https://qe.isis.ne.jp/index/aso

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。