物語講座第13綴「冠綴賞」の行方【75感門】

2021/03/13(土)19:26
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物語講座第13綴の「冠綴賞」は、ねじ式結晶世界文叢の竹岩直子が受賞した。今期、各賞は5人の叢衆で分け合うかたちとなり、「接戦」を制しての受賞である。残念ながら感門之盟への当日参加はかなわなかったが、受賞を知らされた瞬間の喜びが弾ける様子は、ZOOM録画にて共有された。

 

竹岩の知は、豊かな感受性と透徹した洞察が両立する、イシス流に言えば「アリスとテレス」の総和がたいへん大きな知である。その片鱗は学生時分から、語る言葉に、綴る文字に、あられもなく宿っていた。トリガー賞受賞作「絨毯の森」は、小濱有紀子創師が指摘するとおり五感をしみじみと刺激するが、言語聴覚士という本業からの、硬質の知識と観察眼が物語の「地」によく織り込まれていることも感じさせる珠玉の掌編だ。

 

母校である高校の教員の勧めでイシスの門を叩いた。「出藍の誉れ」とは、越えられた師にとっての誉れであることは言うまでもない。

  • 川野貴志

    編集的先達:多和田葉子。語って名人。綴って達人。場に交わって別格の職人。軽妙かつ絶妙な編集術で、全講座、プロジェクトから引っ張りだこの「イシスの至宝」。野望は「国語で編集」から「編集で国語」への大転換。

コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。