この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「5W1H」という基本の基本ではじまった[破]の稽古。1か月後にはアワードに向けて文章を何度も推敲し、磨き上げるまでに熱を帯びる。本日5月11日、54[破]第1回アリスとテレス賞のエントリーが締め切られた。セイゴオ知文術というお題で競い合う。読書は交際である、という松岡校長の言葉にならい、一冊の本とじっくり付き合い、800字で彼を紹介する文章を書く。
10教室・学衆71名中、エントリーしたのは63名。なんと5教室が全員エントリーを果たした。はばたけ御伽衆教室、カオスの縁子さん教室、讃岐兄弟社教室、うごめきDD教室、風土粋粋教室、おめでとう!! 選評委員([破]の師範、番匠、評匠、学匠)は、全員が全エントリー創文を読んで選評する。結果発表は月末。エントリー作品すべてに講評が贈られる。
課題本は前期と同じく、以下のラインナップだ。ISIS co-missionメンバーが選んだ本、[破]ボードが選んだ本と松岡校長の著作、あわせて12冊のなかから学衆は1冊を選び、読み、創文した。
54[破]の学衆にはどの本が人気だったか?
<セイゴオ知文術・課題本一覧>
左は、選んでくださったISIS co-missionメンバーのお名前。
右端に取り組んだ学衆の人数。( )内は前回53[破]で取り組んだ学衆の人数
津田一郎さん:『精神指導の規則』ルネ・デカルト 1名(3)
宇川直宏さん:『音楽が未来を連れてくる』榎本幹朗 3名(5)
鈴木健さん :『知恵の樹』H・マトゥラーナ、F・バレーラ 4名(6)
今福龍太さん:『続審問』J.L.ボルヘス 4名(1)
田中優子学長:『苦海浄土』石牟礼道子 6名(8)
井上麻矢さん:『表裏源内蛙合戦』井上ひさし 5名(0)
武邑光裕さん:『仕事としての学問 仕事としての政治』マックス・ウェーバー 3名(1)
大澤真幸さん:『自我の起原』真木悠介 5名(7)
鈴木康代さん:『エストニア紀行』梨木香歩 11名(13)
松岡校長本 :『ルナティックス』 2名(3)
破ボード選定:『ビリジアン』柴崎友香 8名(5)
破ボード選定:『すべての、白いものたちの』ハン・ガン 11名(7)
ノーベル文学賞を受賞したハン・ガンの『すべての、白いものたちの』、そして大河ドラマで注目された平賀源内を扱った『表裏源内蛙合戦』の伸びが目立つ。世の中で話題になっているものには、いろんなイメージがくっついている。その既知をとっかかりに読み始めた本で、既知をひっくりかえす驚きがあったか? あるといいなあ、と願いつつ、選評会議に臨む。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
東京の大岡山エリアといえば、東京科学大学(旧・東京工業大学)のある学園都市。にもかかわず、なんと書店がなかったという。そこにできたのが青熊書店だ。 青熊書店は、2025年3月15日に、自由が丘から移転して、 […]
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。