この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

ギィィ
パタン
カチャリ。
50守全教室に鍵がかかった。
開講の10月24日から17週間、38のお題を真ん中に回答と指南を交わし、インターネット上の一角にあるスペースが、忘れられない教室になっていった。
モモめぐむ教室師範代の中村裕美は、学衆に語りかけた。
今ぴんとこないことも、時が違えばハッとする。
それが明日なのか、一か月後なのか、一年先なのか、分かりません。
だから時々様子を見てやってください。タネが芽吹いた瞬間を。
これから先、ふと迷うことがあれば、立ち寄ってみてくださいね。
教室はいつでも閲覧可能です。
ミネルバ・ロードス教室の師範代、黒田領太はチームラウンジでつぶやいた。
熱い稽古をここでしてきたんだ、もうこの時間はこないんだと思うと胸が熱くなります。
終わりという区切りがあるから、これまでの道のりを振り返ることができる。
傑作ペパーランド教室の西村洋己は「私はこの指南を通して師範代になっていくことができました」と学衆に感謝し、ここいら普門教室の大塚剛史は「未完成を恐れずに、さらなる編集に向かっていってください」と、代々ビオトープ教室の森川絢子は「不足の発見は、可能性の発見である」と学衆を勇気づけた。
施錠された教室はもう動かない。編集稽古の初心が結晶化することで、各人の胸の中の面影となり、次の扉へと向かえるのだろう。
過ぎし扉と新たな扉に
鍵を。
釣果そうか!教室師範代、稲森久純が施錠と同時に放った言葉だ。そう、一つの扉を閉めた鍵は、次の扉を開くことができるのだ。
この春、50[守]を巣立った面々は次なるさしかかりへ。どんな鍵穴を見つけるのだろうか。
◆「教室」を体験したいなら ― 51[守]申し込みへ
[守]基本コース(51期)
2023年5月8日~8月20日
https://es.isis.ne.jp/course/syu
◆[守]に続く扉なら ― 50[破]申し込みへ
[破]応用コース(50期)
2023年4月24日~8月13日
https://es.isis.ne.jp/course/ha
石井梨香
編集的先達:須賀敦子。懐の深い包容力で、師範としては学匠を、九天玄氣組舵星連としては組長をサポートし続ける。子ども編集学校の師範代もつとめる律義なファンタジスト。趣味は三味線と街の探索。
イシス編集学校九州支所「九天玄氣組」は今年20周年。発足会を行った9月の彼岸をめざし、周年事業を進めている。軸となるのは「九州の千夜千冊」を冠した雑誌の発行だ。松岡正剛の千夜千冊から選んだキーブック1冊ごとに33冊のグル […]
8年近く続いた黒潮大蛇行終息の兆しが報じられる中、イシス界隈に、これまでにない潮流がおこっている。 松岡正剛の「千夜千冊」をキーブックとし、「九州の千夜千冊」を冠した雑誌づくりが動き出したのだ。 イシス編集学校の九州支所 […]
本から覗く多読ジム——『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』【ニッチも冊師も☆石井梨香】
少し前に話題になった韓国の小説、ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)を読んでみました。目標を持つこと、目指す道を踏み外さないこと、成功することや人に迷惑をかけないことに追い立てられている人々が、書店と […]
[守]講座の終わりが近づくと、決まって届く質問がある。「教室での発言はいつまで見られるのですか?」 インターネット上の教室でのやりとりがかけがえのないものだということの表れだ。見返すと、あの時のワクワクやドキドキが蘇る。 […]
「編集しようぜ SAY!GO!」師範代は叫んだ【81感門・50守】
インターネット上の稽古場に50[守]学衆の声が届かなくなって10日が過ぎた。次期に受け渡すものを交し合っていた師範のラウンジももうすぐ幕を下ろす。卒門式の師範代メッセージには、メモリアルな期を走り切った充実がみなぎって […]
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。