この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

いったいどういう風が吹いてきたのか。AIが文章を書いてくれる時代に、編集的に書く講座[破]が盛況だ。48[破]61名、49[破]67名だった受講者が、今期はぐんぐん増え続け、予定を超えて2教室増設、96名での開講となった。
開講前の師範代の研鑽の会「伝習座」では、北原ひでお評匠が、ChatGPTに編集稽古をさせる実演を行った。[破]のお題を入力すると、ChatGPTは、すらすらと回答を書き出す。完成した回答をパッと一気に出すのではなく、一文字一文字が一定のスピードで表示されてゆくので、「いま書いている」感じがする。文章を書きだすときに「うーん」とうなり、書いては消してを繰り返すもどかしさがまったくない。淡々とした出力ぶりを、とってもAI「らしい」と感じた。
文章を書くことがもどかしくないなんて! と驚くとともに、回答の出来栄えもなかなかであった。内容によってヘンだなと思うものもあるが、人間が書いたものと区別がつかないような回答もあった。こういう便利ツールが使えるようになった世界で、悩みながら、時には絞り出すように書きたい人たちが[破]に続々集まってきたとは、いかなることか。
ChatGPTにまかせていいような文書もあるだろう。いままでだって例文集やテンプレート集は重宝されてきた。これからは、AIにまかせられないものを人間が書いていく。AIはいまの世界に存在している情報を組み合わせ、最適な、あるいは妥当な回答を効率的に出してくる。対して編集学校では、なんらかの発見があり、読者と絶妙なコミュニケーションを図る文章を書きたい。書き手の思想や感興がスタイルをもって表象された「創文」をめざしている。
[破]では、最適、妥当を超えて「創造」したい。AIに追いかけられて、人間の編集力がアップするのか? それもいいが、存外、視点を変えるだけでいいのかもしれない。AIには「言えないこと」が、たくさんあるはずだ。校長曰く「AIではルンバのエロスはつくれないじゃないか。」) 注)ルンバは掃除機でなく、ダンス。
50[破]は、本日4月24日12:00に開講した。初回答は12:23に、体内止観教室に届いた。つづく回答は12:38に、異郷エンシオス教室とモーラ三千大千教室に同時に到着。準備万端の師範代と、稽古を待ち構えていた学衆の手合わせが始まる。あなたにしか書けないことを、方法をもって生き生きと綴ってゆこう。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。