この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「1時間でわかる○○」といったタイトルが珍しくもないほど、コスパ、タイパが叫ばれる昨今だ。ムダをはぶき、時間を大切にするのはいいが、節約のための節約になってしまっては、ミヒャエル・エンデの『モモ』が描く灰色の世界になってしまう。手間をかけたいところにかけるためのコスパ・タイパだろう。
たとえば[破]には、時間をかけて本を読み、なんども推敲を繰り返してその本について書く、ということにコストをかけたい人たちが集う。
松岡校長の千夜千冊にあやかって、一冊の本を身に沁み込ませるように読み、読み込んだことによって自分におこった感興や、その本に触発されてワカッタカワッタことを書く。
読書は、世界中の知者や歴史上のアーティストとの交際であり、それによって自分を変化させるコラボレーションだ。編集学校ではインタースコアとよんでいるこんなやりとりにこそ、手間と時間を注ぎたい。
本日5月21日(日)18:00、50[破]第1回アリスとテレス賞「セイゴオ知文術」のエントリーが締め切られた。[破]の最初の山場、ミニ千夜千冊を競うアワードだ。
12教室・学衆96名中、エントリーしたのは87名だった。さやさやドローン教室、境域ビオトープ教室、異郷エンシオス教室、全員反攻教室、体内止観教室、外骨マガジン教室は全員エントリーを果たした。おめでとう!!
選評委員(木村久美子月匠、[破]の師範、番匠、評匠、学匠)は、それぞれ全エントリー創文を読んで選評会議に臨む。結果発表は6月。全エントリー作品に講評がつく。
さて、気になる課題本の人気ランキング。ダントツ1位が『地球にちりばめられて』17点、次は『数学する身体』12点。この2作、前期は同数でトップだった。つづいて『生命誌とは何か』『フラジャイル』が各10点、『悪童日記』『虫と歌 市川春子作品集』が各8点、『あなたの人生の物語 』『東京プリズン』が各7点であった。『椿の海の記』が6点、『文字逍遥』が2点。
『地球にちりばめられて』の主人公は、故国がなくなってしまって帰ることができない。ウクライナをはじめ、世界各地で起こっている戦争や紛争への注意が、この本を選ばせたのだろうか。長編の『東京プリズン』、やや難しい『文字逍遥』に果敢に取り組んだ学衆がいたことも嬉しい。
この10冊、いくつか重ねて読んでみると、相互に響き合っているように感じるはずだ。そしてまた新たなヨミの局面を発見してしまうだろう。滋味深い本を手間と時間をかけて読み、私の一部にしてゆこう。
原田淳子
編集的先達:若桑みどり。姿勢が良すぎる、筋が通りすぎている破二代目学匠。優雅な音楽や舞台には恋慕を、高貴な文章や言葉に敬意を。かつて仕事で世にでる新刊すべてに目を通していた言語明晰な編集目利き。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。