この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

コロナにより、出会いの場が制限されて、早三年。だからこそ、人と繋がる事はとても大切な事になった。
いっせいに配信されるテキストのお題に、学衆は文字で回答を返す。その回答には、師範代からの指南が再び文字で返される。イシス編集学校はオンラインの学校で、「編集稽古」は文字だけで行われる。「文字だけのやりとりとは思えない」とは、学衆からよく聞く感想だ。お互いの回答を読み合いながらの4ヶ月は、考え方やものの見方が大きく変わり、ともに学んだ仲間たちとの絆はかたい。
コロナが流行する前までは、汁講と呼ばれる歓談の場で、初めて、師範代や教室の皆と会えるのだが、47期はコロナの蔓延により、汁講も、卒業を祝う感門之盟も、全てリモート開催になってしまった。実際に会うことはできない、だが、リモートならではのダントツがあるはず。イシス編集学校の師範代は、編集を諦めなかった。
リモート開催では場所の制約がない。日本各地にいる学衆をオンラインでつなぎ、全員参加のワークを考えた。普段のお題回答は読む、書くだけだが、画面にフリップを出し、師範代が話をしながら、師範がチャットにお題を出す。出てくる回答にその場でずばりと指南を返す師範代。ライブな編集稽古に盛り上がり、歓談はあっという間に時間が過ぎた。しかし、リモートで届けることができなかったものが一つある。それが本楼の空間だ。二万冊あまりの日本に関する本が、壁にも柱にも造られた本棚にみっしりと詰まっている。まるで生き物と対峙するかのような空間だ。松岡正剛校長の数寄の至極、本楼は感門之盟が行われるハレの場であり、特別な場所なのだ。
コロナ禍が始まり三年、マスクを外す機会も増えた今、本楼で、47守破限定の合同汁講「ふきよせ会」を行う。
ふきよせとは、紅葉や落ち葉、さまざまな葉が風に吹かれて、運ばれ、集まってくること。それにちなんで、数種類のお菓子を、彩り豊かに詰め合わせたものを「ふきよせ」という。
卒門、突破によって散っていった[守][破]の学衆たちが、47守破師範代有志の起こした風により、桜の花びらが集う花筏のように本楼に集まる、季節外れのふきよせの見立てだ。
ふきよせ会は4月9日開催。
お題を通して、心を寄せた仲間たちの一年半ぶりの「初めまして」が本楼に響き合う。
「47守破限定 特別合同汁講 ふきよせ会 詳細」
日時 :2023年4月9日(日)14:00~17:00
内容 :本楼ツアーや本の交換会のほか、おやつを食べながらの歓談。
参加費 :2,000円(税込)
お支払いは当日現地で行います。
場所 :本楼
限定人数:30名
当日の持ち物
・参加費:2,000円
・「睡れるお宝本交換会」用の本:1冊
参加者同士で本の交換会を行います。ご自宅にある、積読本や、オススメ本をご持参ください。
誰の手元にいくかはわかりませんが、本の中(表紙裏など)にメッセージをご記入ください。
お申し込みはこちらから
https://forms.gle/LUUee7cSSVcifgg2A
扉を開けると…
井寸房。 本楼への扉は4月9日に開く。
北條玲子
編集的先達:池澤祐子師範。没頭こそが生きがい。没入こそが本懐。書道、ヨガを経て、タンゴを愛する情熱の師範。柔らかくて動じない受容力の編集ファンタジスタでもある。レコードプレイヤーを購入し、SP盤沼にダイブ中。
風に舞う花びらは、本楼から京都へと運ばれた。[守]の師範代は、[破]の師範代へと変身を遂げ、その笑顔には頼もしさが漂う。 思えば、53[守]の本楼汁講で、土田実季師範代は、その力を発揮したのだった。 202 […]
世界は「音」で溢れている。でも「切ない音」は1つだけ――。54[守]師範が、「数寄を好きに語る」エッセイシリーズ。北條玲子師範が、タンゴを奏でる楽器「バンドネオン」について語ります。 ただタンゴの音を奏で […]
散る花を 惜しむ心や とどまりてまた来ん春の 種になるべき(西行) 春にもかかわらず、夏日や冬並みの寒さが交互にやってきたり、四季の感覚がすっかりおかしくなってしまったが、散る桜を惜しむように […]
柳田國男は『海上の道』で、海から来たものについて論じた。遠い昔、海流に乗って日本へとたどり着いたものたちがいたのだ。 第83回感門之盟のテーマは「エディット・タイド」EDIT・TIDE(海流)は回文になって […]
ショートショートの動画が流行り、「いいね」一つで関係が完了する時代。しかし、一方的に受け取るだけでは物足りない。イシス編集学校は、発信者も受信者も互いを編集する。 講座の節目となる、83回目の感門之盟は、初 […]
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。