「例外たれ」180秒で回答が届く異例の47[破]、開講

2021/10/11(月)17:51
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ジャン・ジュネが投獄されたのは、たったひとつの安全ピンを持っていたからだった。獄房で発見され事件を呼んだのは、ワセリン・チューブ。このちっぽけなものが世界中の警察を苛立たせたのは、刑務所のコンプライアンスを破ったからではなく、世間の常識に刃向かったからだと松岡正剛は看破した。

 

■「例外たれ」 

松岡は、現代の日本人へのキーワードを求められ、そう書き記した。

「例外たろうとすれば、孤立する。文句もつく、勇気もいる。それはとりもなおさず、たくさんの『例』に囲まれるということ。だからかえって、世の中が見えてくる。例外であることによって、高速に教養を手繰り寄せることができる」

2021年10月、NewsPicksの動画番組「Rethink Japan」の締めくくりに、松岡はジュネの『泥棒日記』を置いていった。千夜千冊では、「泥棒をする少年とは、大人の社会が安全にしまいこんだ常識金庫を破る少年なのである」とハックルベリイ・フィンについてもその痛快さが讃えられている。社会の断点になれとの発破を、ジュネに託した。

▲ナビゲーター波頭亮、司会佐々木紀彦をまえにゲストトークする松岡。NewsPicks佐々木は異質なモノをかけ合わせ、新たなビジネスを生み出す 編集思考なる著作をもち、「編集思考こそが、日本をつくる」と説く。千夜千冊1525夜では佐々木の『5年後、メディアは稼げるか』が取り上げられている。

 

■180秒で初回答 断然な47[破]始まる

 

10月11日正午、47[破]が開講した。

「断然にむかう編集道を、おもいきって愉快におすすみください」と号砲が鳴る。師範代新井和奈(アイドルそのママ教室)は、時計が12時01分まわらぬうちに、お題を届け始めた。100m走の試合であればビデオ判定が求められるほど、異例の反応速度だった。


師範代がクラウチングスタートで一気に駆け出せば、学衆も負けていない。正午の時報から180秒後、47[破]初の回答が届いた。未知トポ教室学衆Tだった。つづいて、レディ・ガラ教室学衆S・学衆Yがつづけて12時台に教室に現れた。お題00番は開講二日前に届けられていたとはいえ、この勢いは破格。「もっと不足を!」と師範代の叱咤を要求したという47[守]の猛者たちの熱血は前評判をはるかに上回った。未知トポTは17時30分現在、1-02番まで提出を完了している。

 

開講前夜、学匠原田淳子は10名の師範代に餞をおくった。『ライティング・スペース』の千夜だった。

「あらゆる情報にアクセスをしやすくなったけれど、それを使って各自が編集を起こすのではなく、ラクに簡単にコトを済ます方向へ向かっている」 

人間としていちばん面白いはずのアルスコンビナトリアな編集術や、自由で連想的な編集力がこのままでは衰退してしまうという現代の危機感を共有した。

 

「編集学校に入門し、[破]までやってくる学衆さんは『それではいけない』『物足りない』と思っている人たちでしょう」 

異質を恐れず、例外へむかえ。編集は「よく練られた逸脱」を目指すのだ。47[破]は断点を断然点にすべく、地面を蹴りだした。

 


イシス編集学校 

47期[破] 指導陣

2021年10月11日(月)~2022年2月6日(日)(17週間)


師範代:

 山口イズミ●泉カミーノ教室
 堀田幸義 ●万事セッケン教室
 新井和奈 ●アイドルそのママ教室
 佐藤健太郎●現象印象表象教室
 稲垣景子 ●オブザ・ベーション教室
 清水幸江 ●八客想亭教室
 細田陽子 ●時たま音だま教室
 華岡晃生 ●脈診カーソル教室
 小桝裕己 ●未知トポ教室 
 長島順子 ●レディ・ガラ教室

校長:松岡正剛

学匠:原田淳子
番匠:野嶋真帆
評匠:関富夫、高柳康代、中村まさとし
師範:新井陽大、北原ひでお、齋藤成憲、竹川智子、渡辺高志
番記者:梅澤奈央


 

  • 梅澤奈央

    編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
    イシス編集学校メルマガ「編集ウメ子」配信中。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。