38[花]仮想教室名で跳んでみる

2022/12/03(土)07:05
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藁に縋らず、名に肖る。

 

錬成はクライマックスへ。入伝生にとっては胸付き八丁にさしかかり、最も苦しい場面だ。方法的に回答を評価するということ、学衆の可能性を開く指南を書くということ、その匙加減に身悶える。師範の言葉にどう応じてよいかもわからず迷子になることさえある。そんな彼らの稽古を支えてくれる一つに、自分で名づけた仮想教室名がある。正式に師範代になる者には松岡正剛校長から唯一無二の教室名を授けられるが、花伝所の演習段階では、自分で考えた仮の教室名をつけて、本番さながらにお題や指南をラウンジに届ける。これまで、その教室名が日の目を見る機会はなかったが、入伝生なりに松岡校長を擬きながらネーミング編集を駆使した賜物をはじめて公開することにした。どんな未来の師範代が集まっているのか、教室名から想像を広げてみて欲しい。

 

◆◇◆

 

ふんわりあじわい教室
★ほわああ。こんなお菓子があったら食べたくなります。

 

てんどん花火教室
★パチパチと何度でも打ち上がる花火が天を彩るのでしょう。

 

ラーメン三国志教室
★国道沿いに暖簾が連なり、いつの間に全国制覇か。

 

ビオロジカル教室
★シュッとしてるけど極めて生命を感じます。

 

トラ柄一番星教室
★やられた。トラ柄はいて宇宙旅行しかない。

 

群棲アイリス教室
★花でありカメラの絞りであり。どちらも光が決め手です。

 

されど・17音教室
★定型があるから自由になれる。小津夜景を思い出しました。

 

ファンキーフラミンゴ教室
★頭の中はワイルド・チェリー。水辺でステップを踏みたくなります。

 

パリピーオヤジ教室
★ひと目見て笑った。パーティーは眠らない!?

 

シャッターガラガラピッシャン教室
★閉じたのか開いたのか。シャッターの向こうは異界でしょうか。

 

風船まくら教室
★寝ても覚めてもふわり夢心地になれそうです。

 

カラクリ魔森教室
★グリム童話にも出てきそうな森にいつの間にか迷い込んだ。

 

年中半袖教室
★わんぱくな子供たちはいつでも半袖です。

 

里山の傍のBBQ教室
★持ち込み歓迎。仲間と意気投合できる秘密基地だ。

 

異取覚投教室
★最強の知のアスリートがここに集結か。

 

金継ぎ愚連教室
★欠けたもの同士が集まるとあやしい事が生まれます。

 

とどろけじ~ん教室
★不思議な響きは遺伝子の多様化の前ぶれか。

 

逸脱・冒険許可教室
★先に許可を出されたら、もうどこまでも遊ぶしかない。

 

瀬戸内ほおばりこぼれる教室
★ジュワッ。お腹が空いたらこのトポスに戻るのが一番だ。

 

めくるめく頁教室
★瞬きするのも惜しいくらい次が早く読みたくなる。

 

◆◇◆

 

ユニークで工夫を凝らした名前に顔がほころんでしまう。「群棲アイリス教室」の擬き師範代は、教室名の種明かしをしていて、ドゥルーズが語った「リゾーム」や千夜千冊によく登場する「アジール」に通じるものもこの名に込めていたようだ。

 

タイトルやネーミングには「いわれ」と「あやかり」の魔力があって、それがないと子供も育たないということが書いてある。まさに、そうですね。育たないだけでなく愛着も出ない。たとえばミモザとか月見草という花の名前はそのネーミングがないと「よすが」も出ない。

2007/05/14 松岡正剛【校長室方庵】より

 

私が入伝生の頃に付けた仮の教室名は「8ミリぽっぷこーん教室」だった。懐かしいような恥ずかしいような名前だが、清水伺名子錬成師範に「こんがりと香ばしいポップコーンを何度も食べたくなる」と指南のモードを評されて、錬成でささくれだった心が癒されたことが思い返される。「名」とは不思議と愛着がわくし、力をもらうのだ。ちなみに、松岡校長からもらったホントの教室名は「影感モンタージュ教室」。私には不似合いな程、あやしくて、お洒落でかっこいい。ただ、実際の教室では想定外に教室名がギャグっぽく学衆にイジられたり、言い替えられたりして、これが教室に変化を起こし続けてくれた。校長は絶妙に学衆の遊び心をくすぐるスパイスを「名」に潜ませる名人なのだ。

 

入伝生はホントの本番に向け、今は仮想教室名に肖って跳躍をつづける。

 

文 林朝恵
アイキャッチ 阿久津健

 

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  • イシス編集学校 [花伝]チーム

    編集的先達:世阿弥。花伝所の指導陣は更新し続ける編集的挑戦者。方法日本をベースに「師範代(編集コーチ)になる」へと入伝生を導く。指導はすこぶる手厚く、行きつ戻りつ重層的に編集をかけ合う。さしかかりすべては花伝の奥義となる。所長、花目付、花伝師範、錬成師範で構成されるコレクティブブレインのチーム。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。