この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

遊刊エディストは創刊から4回目の新年を迎えました。今年も、編集部恒例の「エディスト新春放談」をお届けしてまいります。エディスト・ライターやニューカマーをゲストに招き、2023年の新たな展望に野望、夢想に妄想まで、新春から放談していきます。では、全6回の連載をどうぞ存分にお楽しみください。
◎遊刊エディスト編集部◎
吉村堅樹 林頭, 金宗代 代将, 川野貴志 師範, 後藤由加里 師範, 松原朋子 師範代, 上杉公志 師範代, 梅澤奈央 師範,穂積晴明 デザイナー
金 新年ですね。
吉村 明けましでおめでとうございます! 編集部のみなさんにとって昨年はどんな年でしたか?
穂積 ぼくは去年もいろんなデザインをやらせてもらいました。
吉村 そうだね。『情報の歴史21電子版』はもちろん、感門の待受からエディターシップまで、伝習座の待ち受けからAIDAまで。いろいろありますが、直近では12月6日にようやく発売開始になった『情報の歴史21電子版』のサムネール画像もよかったよね。
梅澤 ああ、小さいTVの並んだ、かわいいデザインですよね。
吉村 今年の年賀状も穂積と僕との合作ですが、穂積くんが余程気に入ったのか、あのTVモニターから兎が登場するというのが、デザイン初稿だったんですよ。
穂積 でもすぐにダメだしされました(笑)
吉村 あれは兎が可愛すぎたんですよ。数も少なかった。だって兎は数が多くないと。
梅澤 えーー、可愛くて少ないとダメなんですか?!
吉村 ほら、兎って多産じゃない? いたずら好きというところもあるし。
後藤 いたずら好き?!(笑)
金 ウサギの飼い主として言いますが、ウサギの多産はヤバいですよ。放っておいたら200 匹くらいに増殖します。「うさぎ 増殖」でググってみてください。あと、イタズラ好きといえば、よく配線を噛みちぎりますね。
吉村 それにだいたい兎をデザインしようと思うと、雪うさぎか鳥獣戯画みたいになってしまって、デザインが意外と難しいんですよね。
穂積 その後、兎の早来迎図みたいなのはどうかと話をしましたね。それで菩薩のような半眼の兎を作ったんですが、今度は兎が眠そうだからとボツに(笑)
金 まあ、確かにウサギはだいたい眠っているか、草を食べているか、おしっこをしているかのどれかですけどね。うんともすんとも言わない。
吉村 でも正月から眠そうな兎ではダメでしょう。そこからやはり言葉を先につくった方がいいかと、四文字熟語を先につくったんですよ。たくさんの情報が届いて、雲がかっているものを開くという意味で、「卯報雲展(うほううんてん)」にしました。
梅澤 わー!晴れのイメージですね。
吉村 で、できたデザインがカバー画像のものです。
穂積 波に乗っている兎を多数登場させました。
吉村 ということで、今年は皆さんにたくさんのよき情報をお届けして、皆さんの将来を開いていくイシス編集学校になるようにと思っています。
金 エディストも、ですね。
穂積 「オツ千」も皆さん聞いてくださっていますか? 2023年も頑張ります。
「おっかけ!千夜千冊ファンクラブ」。ちぢめて「オツ千」。千夜坊主こと林頭の吉村堅樹と千冊小僧ことデザイナーの穂積晴明。「松岡正剛の千夜千冊」ファンを自認する二人が、千夜のおっかけよろしく脱線、雑談、混乱の伴走するショート・ラジオ。2022年末までにVol.35を数える。
金 2022年の新春放談を振り返ったら、ウメちゃんが2021年に編集部に入ったことがニュースでしたね。
梅澤 もっと長くやっている気がしますね(笑)そういえば[破]のバンキシャをやるあたりから編集部入りしたんでしたねえ。
金 どうですか皆さん、2022年のハイライトといえば?
後藤 私は、堀江さんの連載「マンガのスコア」が完結したことですね。
川野 あー、それはもうね。
金 その後、堀江さんは多読SP「村田沙耶香篇」で自作漫画「コンビニ人間失格」を発表しましたね。
後藤 それから去年は、花伝所がすごかったです。アイキャッチ画像の作成まで師範がやるという。
上杉 以前から注目していた阿久津健師範が、いよいよ本格的にデザインの腕前を発揮してくださり始めた2022年でした。輪読座から始まり、今や花伝所のエディストのアイキャッチを一手に引き受けてくださっています。
吉村 2022年は、編集学校の「外」とも編集を重ねていくことへチャレンジし始めた年じゃないかな。多読ジムでの出版社コラボ、ノーベル賞・芥川賞・直木賞受賞作品の書評を様々な職業の視点で皆さんに書いていただきました。
金 もうすぐ「このマンガがすごい!」のBOOK REVIEWも公開されますね。
梅澤 さまざまな職業的バックグラウンドのみなさまというと、「推しメン」シリーズも2022年からの新連載ですね。
吉村 ウメちゃんと僕とでインタビューして、ウメちゃんがほとんどの原稿を担当してくれました。このシリーズは松岡正剛校長にも気に入ってもらえているようで、記事面白かったよと話しかけられることもありますね。書いているウメちゃんとしては、どうですか?
梅澤 これぞイシスだなあと感じてます。イシスの面白さって、関わっている人たちの年齢も職業もお住まいもみんな違うのに、みんなそれぞれがユニークなところじゃないですか。たとえば牛山さんの幼いころのお話や、江野澤さんの西洋的価値観への違和感のお話など、今まで聞いたことのないバックグラウンドも改めて知ることができたのがよかったです。
川野 内海太陽さんや鈴木亮太さんの推しメンインタビューでもそうでしたが、日本的なことへの関心を結構みなさん語られますよね。想像を上回ってきたなという感じがしますね。
吉村 みなさんは「日本する」をもっとやりたいんだろうね。
川野 それが見えてきましたね。
上杉 僕が印象に残ったのは、やっぱり「YADOKARI」。YADOKARI以外にありません(笑)
上杉 といいつつ、ウメ子のメルマガの反響が大きいのもすごい。2022年から編集学校から未入門者の方へのメルマガは「編集ウメコ」という名前で配信していますが、これが人気です。
金 「ウメ子」というエディティング・キャラクターがバシッとキャラ立ちしましたね。
吉村 松岡校長が、感門之盟でウメ子はISIS初のジャーナリストだね、といっていたことが思い出されます。
マツコ メルマガに丁寧なご感想とか、アンケートへの回答を寄せてくださる方々が多数いらっしゃるのですよ。ウメ子とメルマガを通じたインタースコアがもう始まっているというか。いつか、「ウメ子を囲む会」をやっていただきたいなぁ…。
金 そろそろゲストたちがやってきましたよ。お招きしますね。
「其の弐」に続く…
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2023年 新春放談
其の壱 – エディストは「卯報雲展」なメディアになる (1月1日 0時公開)(現在の記事)
其の弐 – [守][破][花]の卯年、エディティング・キャラクターの突出へ向かう (1月1日 19時公開)
其の参 – 言語聴覚士は、迷いながらもメタファーで綴り続ける(1月2日 公開)
其の肆 – 2023新春放談 其の肆 – カメラ部の2年目は“ISISビュアル祭り”を!(1月3日 公開)
其の伍 – YADOKARIの野望?夢想?「指南・多読・意匠」への思い(1月4日 公開)
其の陸 – 編集部の卯年、跳ねて弾けてさらなる編集的高みを目指す!(1月5日 公開)
エディスト編集部
編集的先達:松岡正剛
「あいだのコミュニケーター」松原朋子、「進化するMr.オネスティ」上杉公志、「職人肌のレモンガール」梅澤奈央、「レディ・フォト&スーパーマネジャー」後藤由加里、「国語するイシスの至宝」川野貴志、「天性のメディアスター」金宗代副編集長、「諧謔と変節の必殺仕掛人」吉村堅樹編集長。エディスト編集部七人組の顔ぶれ。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。