「松岡火元校長が託した3つの課題意識」十四[離]退院式開幕(第76回感門)

2021/05/15(土)16:27 img
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[離]の指導陣は「火元」と呼ばれる。火元は入院した学衆に、時に厳しく、刻印されるような言葉を容赦なく手渡す。創を負い、失敗をし、離中で自信喪失する学衆も少なくない。

 

師範代育成コース[花伝所]で指南にあたり、まず「受容」の言葉を学ぶイシス編集学校の中にありながら、なぜ[離]はこのようなプログラムになっているのだろうか。

 

 

松岡校長が火元に託した3つの課題意識

2021年5月15日、第76回感門之盟「世界読書奥義伝 第十四季 [離]退院式」。

 

「『表沙汰では必ずや退院式では本楼でお会いしましょう』と誓いながら、またしても画面と画面の間で会うことになってしまいました。切ない14[離]ですね。」

 

太田香保総匠は、禁じ得ないおもいを言葉にする。つづいて、14[離]がはじまってまもなくの頃に松岡火元校長から火元に託された「3つの課題意識」を退院した学衆へ打ち明けた。

 

1.今の日本も世界も、ひょっとしたらイシス編集学校も「覚醒」が持続しなくなっている。14[離]の学衆の諸君も、覚醒しっぱなしでいてほしい。

 

2.社会の流動化・フラット化があまりに進んでいるために、「人並みでいい」「並でよい」と口にして、存在を縮退させたり沈潜させてしまっている。それではいけない。

 

3.昨今のSNSの影響か「たくさんのわたし」が矮小化しまっている。一人ひとりが例外的で、格別な「たくさんのわたし」になってほしい。

 

火元から学衆への痛みを伴う言葉は、この三つの意識から手渡されていた。

 

 

「本」が、ひとりではできない克服や何かに向かう目標をつくってくれる

こうした課題意識にはどのような大元があるのだろうか。

肺ガン手術から退院したばかりの松岡火元校長が、3階の書斎からZoom越しに、その呼吸とともに発する。

 

 

肺ガンにあたり、プロのチームが血糖値や麻酔の効き具合、あらゆるデータ情報をふまえて、手術・入院期間を完璧にコントロールして治癒に向かってくださった。これは僕ひとりの克服では到底無理です。

 

世界読書奥義伝もこのようなこと。「血糖値はこの本」「血圧はこのテーマ」「ヘモグロビンはこれ」といったように、あらゆる本が、ひとりではできない克服や、何かに向かう目標をつくってくれる

 

こうした「本」とは、おそらく一生かかっても一割すらであうことができないだろう。火元校長のしつらえた[離]は、そうした「本」とであいつづけるプログラムであった。

 

そうして創をみたり長所をみたり、潤いを感じてみる。これが「世界読書奥義伝」という非常に珍しいやり方です。

 

努力がかたちになって報いる、退院式の一日を楽しんでほしいと思います。

 

司会を担うのは大久保佳代・桂大介の両右筆。退院を寿ぐ感門之盟がはじまる。

 

(左から)桂大介右筆(武臨院)、大久保佳代右筆(曵瞬院)、太田香保総匠

 

 

【世界読書奥義伝 第十四季 [離] 指導陣】

 ◆火元校長 : 松岡正剛
 ◆総  匠 : 太田香保
 ◆別当師範代: 小坂真菜美/倉田慎一(方師)
 ◆別  番 : 寺田充宏・小西明子
 ◆右  筆 : 大久保佳代・桂大介
 ◆析  匠 : 小倉加奈子
 ◆方  師 : 田母神顕二郎

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。