この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

指南とはそもそもどういうものだろう? 回答を送る学衆と指南を手渡す師範代はどのような関係なのだろうか?
そうした問いから始まった森由佳[守]師範は、第149回伝習座で師範代の構えを語った。
道に迷わないために南を示すという、中国の「指南車」が起源と示しつつこう続けた。
「学衆がお客さんで師範代は人力車なのか? そうではない。
また、師範代の力だけで南につくかというとそうでもなく、学衆は回答を繰り返すだけで動く電気自動車でもない。
つまり、学衆の力だけでも、師範代の力だけでもない。」
すると、学衆をいいかえるとどうなるだろう。
「学衆は車輪かな。自分で進まないといけないから。
ただ、車輪だけで動かないからエンジンが必要。
それは編集学校の仕組みそのもの。あるいは教室、問感応答返、先達が積み重ねた指南事例。
何よりその真ん中に松岡校長という超強力なエンジンがある。」
では、編集エンジンがあるだけでいいのか。そんな中で注意が必要なことがある。
「編集の力を直接車輪に伝えると動かなくなる。
だからその間にギア(歯車)が必要になる。
編集エンジンの動力を伝えるのが師範代なんじゃないかな。」
学衆は車輪、師範代がギア、車を動かすのが編集力。
「ギアにも色々ある。
ハイギアは高速道路や番ボーに。学衆を乗せていける。
だが、山道や手強いお題には、ローギアでじっくり時間をかけて登っていくことも必要。
38番のお題をいかに全部やっていけるように学衆さんの車輪を回して、編集エンジンをうまく伝えていくのが師範代の役割です。
ぜひたくさんのギアを持ち替えて、ギアチェンジしながら頑張ってください!」
と締めくくった。
上杉公志
編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。