この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

12月15日(日)に放送されるBSフジ「松本清張 ニッポンの謎に挑む」に、セイゴオがVTRで登場する。
かつてセイゴオは、テレビ番組『ニュードキュメンタリードラマ昭和』で企画構成を担当し、監修・コメンテーターをつとめていた松本清張の姿を間近で見続けてきた。そのとき戦後昭和史にどっぷりつかったと同時に、清張の創作の秘密の一端にふれたという。清張の卓抜な推理力について、セイゴオは千夜千冊で次のように綴っている。
―――資料でわかる情報には必ず限界がある。そこでどこかですっぱり「見切り」をつける。ここからの転換が速い。不足分を推理と構想で補っていくのである。このとき注意すべきは、推理だけでは補えない筋書があるということであるという。むしろ構想こそが必要らしい。その構想が「見通し」で、その見通しにもとづいて、逆に推理の手順をくみたてる。推理はあとから理屈づけるためについてくるらしい。
289夜 松本清張「砂の器」 https://1000ya.isis.ne.jp/0289.html
この「見切り」と「見通し」によって社会や歴史にひそむ“暗号”を浮き彫りにする手法が、清張の真骨頂なのだという。セイゴオのアブダクション的方法のルーツは、松本清張の推理力にあった。とくに日本古代史の謎に独自の仮説でせまった『清張通史』(全6巻,講談社)に編集的視点を教わったと、セイゴオはTV取材のなかで語った。他にもなぜ日本信仰の起源をたどろうとしたのか、なぜ晩年に天皇に関心をむけたのか、清張のアブダクション仮説の射程はどれほど広かったのか、と“社会派ミステリー作家”という肩書におさまらない松本清張の深淵に切りこみ、その魅力をいかんなく紹介している。
番組名:BSフジサンデースペシャル『松本清張 ニッポンの謎に挑む』
http://www.bsfuji.tv/matsumotoseicho/pub/index.html
放送日時:2019年12月15日(日)18:00~19:55
出演者:
<スタジオ出演>
阿刀田高(作家)
山本一力(作家)
郷原宏(文芸評論家)
<VTR出演>
みうらじゅん(イラストレーターなど)
松岡正剛(編集者・著述家)
五木寛之(作家)
ほか
寺平賢司
編集的先達:カール・ゴッチ。松岡事務所の期待のホープとして、千夜編集部やプロジェクトを仕切る。フィリピン人の母と日本人の父をもつハーフボーイ。調子のよさでは右にでるものがいない。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
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2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。