この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「師範全員、登場しましたよね」
伝習座前日、21時半。和田めぐみ番匠は、師範9人の出番確認を終えようとしていた。
「あ、白川さん」
白川”らくだ”雅敏師範だけ、なぜか忘却の彼方にいた。物々しい緊張感の本楼、数時間ぶりに空気が緩む。
画面に登場したらくだ。なぜか下からの照明を浴びている。話し出すと、さらなる笑いを呼ぶ。マイクの不調だ。
「音がワレワレです」
和田は、息も絶え絶えに伝える。
鈴木康代学匠は、ダハハと前のめりになる。
「白川さん、ダースベイダー化してますよ」
「みなさんの見立ての力、すごいですねえ」と、もっともらしいことを言いながら、らくだはのんびりと調整する。
「いいマイクのほうにしました」とらくだが言う。
「いいマイクあるんですね」
なぜ最初からそれを使わないのか。和田は菩薩の笑みになる。
数日前に行われたZoom会議でも、白川は真っ暗闇のリビングから参加した。地球環境への思いやりだろうか。
白川らくだは、電気もマイクも節約する。
限りある資源で生きる、砂漠のらくだの知恵である。
本番でも、マイク電源オフのまま話し出す徹底ぶり
(写真:後藤由加里)
梅澤奈央
編集的先達:平松洋子。ライティングよし、コミュニケーションよし、そして勇み足気味の突破力よし。イシスでも一二を争う負けん気の強さとしつこさで、講座のプロセスをメディア化するという開校以来20年手つかずだった難行を果たす。校長松岡正剛に「イシス初のジャーナリスト」と評された。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。