【参丞EEL便#033】「ちえなみき」で触れる7つの文字の世界

2023/01/25(水)14:35
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ひとつ、「雲」という字は元々は「云」と書き、これは雲気たなびく下に、竜のくるっと巻いたしっぽが見えている形である。大昔、人々は雲の中に「竜」がいると考えていた。

来場者10万人を突破した福井県敦賀市「ちえなみき」で、「一文字の中のものがたり」をテーマに、ワークショップを開催した。ゲストは画工の金子都美絵さん。

 

福井県は白川静の出身地であり、金子さんは生涯のテーマとする白川静の漢字の世界を2000枚以上イラストにしてきた。松岡校長とも親しい(平凡社ライブラリーで2022年刊行・松岡正剛『白川静―漢字の世界観』の記事にも金子さんが登場された)

金子さんが用意したのは、「雲」「念」「究」「集」「進」「思」「想」という7つの漢字。そして、漢字にひそむ、それぞれの文字のものがたりである。

 

ふたつ、「念」という字の「今」は栓のついているふたの形で、「心」は心臓の形。ふたをして中のものを閉じ込めるように、心中に深くかくす、心中に深く思うことを「念」といった。

 

何千年にもわたって一文字の中に紡がれてきた物語が立ち上がり、それを見て聞いた参加者は、湧きあがったイメージや連想を組み合わせ、1冊の折本に仕上げた。(詳細の様子はEELサイトの記事から)

 

漢字カタカナひらがな混じりで、読み書き写されきた日本語の方法を、現代に持ち出だすための3つのヒントが、先日のAIDAシーズン3第4講で松岡座長から投げかけられた。ちえなみきでは、日本語としるしと本のあいだをつなぐワークショップやセッションが今後も行われる予定だ。

 

[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]
//つづく//

  • 橋本英人

    函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。

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コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。