【参丞EEL便#011】新社長就任 & アナロジカル・シンキングがひらく才能

2022/07/06(水)12:03
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”アナロジーは、個人の経験や記憶のデータベースと照合しなければ動きません。「何をもって何とみなすか」のあいだには、人それぞれの「ものの見方」が入らざるを得ないのです。そのため、10人いたら10人のアナロジーがある。だからこそ、導かれた視点が価値を持つのです。 ・・(中略)・・自分のイマジネーションに向き合うことさえできれば、誰の中にもアナロジカルに発想する力はあるのです。”ー『才能をひらく編集工学』(安藤昭子、2020)

 

EELにはたくさんの祝電が送られてきている。6月23日に新社長に就任した安藤を寿くものだ。2階学林堂は紅白のお花が飾られて鮮やかである。その安藤が中心となり、発想力にビジョン浸透にと、EELでは数々の企業研修を進めてきた。近年「アナロジカル・シンキング」の講座が特に人気がある。「地と図」や「アーキタイプ」を型として活用する。

 

イシスではアナロジー・アフォーダンス・アブダクションの「3A」は編集稽古の骨法であるが、日常のビジネス業務ではほとんどアナロジーの威力を実感されていない方が多い。個人的な見方や好きや飛躍より、客観的な説得性や納得性を詰める思考が動く。そこを解きほぐして、自由連想の扉をひらく。

 

最近では、かつて松丸本舗のブックショップエディターであり、現役の[離]火元組でもある小川玲子師範にも講師をお願いした。小川さんは受容と評価のメリハリがうまい。鋭い。濃淡がある。対面で、ビシッと南を指すフィードバックを返すことができる。「連想に型があることに驚いた」「らしさを捉えるのが楽しい」「編集稽古をしてみたい」など、受講者の感も応も動く。今後は、アナロジーやアブダクション実践の講座ラインナップを仮設していくことになるだろう。編集工学3Aに、読相や方法日本の見方もまぜまぜしていきたい。

 

[編工研界隈の動向を届ける橋本参丞のEEL便]

//つづく//

  • 橋本英人

    函館の漁師の子どもとは思えない甘いマスクの持ち主。師範代時代の教室名「天然ドリーム」は橋本のタフな天然さとチャーミングな鈍感力を象徴している。編集工学研究所主任研究員。イシス編集学校参丞。

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コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。