かける手間ひまイシス一。マキコ・カジョリーヌのおもてなし

2024/01/04(木)21:56
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自信過剰、自意識過剰など、どこかネガティブなイメージを抱かせる「過剰」という言葉。イシス編集学校で師範や番匠を歴任するマダム・マキコ(若林牧子)はそんなイメージをものともせず、過剰さこそを真骨頂にひた走ってきた。2023年の年の瀬、スペシャルエディットツアーで自慢の料理に腕を振るったマキコのおもてなしぶりを、年始の景気づけにお届けする。

 

◆フランスで助走

遊刊エディストに刻まれた歴史を辿ると、マキコのおもてなしが初めてフィーチャーされたのは4年前のお正月エディットツアー。前日から仕込んだ食材を持ち込んでぜんざいやお菓子を振る舞い、お正月らしい演出たっぷりに参加者を喜ばせた。2022年の暮れには師範代で音楽家の上杉公志と組み、クリスマススペシャルエディットツアーを初開催。上杉がくり出す華麗なピアノ演奏を料理で盛りあげるべく参加したマキコだったが、勢い余って盛りあげ料理が盛りすぎ料理と言われるほどに大盤振る舞いをしたマキコ。「過剰なおもてなし」がマキコを語るに不可欠の修飾語となる。

 

そして先月、上杉と組んで2度目のスペシャルエディトツアーを開いた。今年はどんな過剰さが飛び出すのかと思っていると、「最近フランスにかぶれていまして…」と自己紹介をはじめ、なんと、「フランスに1カ月留学していました」と。パリの家庭にホームステイをしてフランス家庭料理の神髄を体感。フランス語学校にも通いフランス漬けの日々を送ったそうだ。(この日のために?)それほどの用意をかさねてくるとは。ここに、過剰さをグレードアップしたマキコ・カジョリーヌが誕生した。

 

フライパンと疾走

先月のエディットツアー当日、3~4泊の旅行でもするのかと思うほどの大荷物を両手に抱えて世田谷豪徳寺の〈本楼〉に姿を現したマキコ・カジョリーヌ。食材、調味料、食器、調理道具に加え、本楼にはないフライパンも自宅から抱えてきた。音楽家の上杉が自在な演奏で参加者を魅了しながらエディットツアーを進めているあいだ、ひとり黙々と料理をし、休憩時間に食事を振る舞うダンドリだ。1時間ほど過ぎたころ、「そろそろ準備はよろしいですか?」という上杉の問いかけに「あと3分ください!」と応じ、ギリギリまで粘ってついに料理が完成した。それでも「ほんとうはもう1品つくりたかったのだけど…」とまだまだ料理をしたそうな底なしのおもてなしスピリットを見せるマキコであった。

 

「ひとりで大変ですよね」と話しかけると、満面の笑みで「たのしいわ♡」。一瞬にしてマキコファンになった。

 

◆フダンギで御馳走

ではまいります、マキコが腕によりをかけたクリスマスプレートがこちら!

手前から時計回りに「鶏のレバーペーストのバゲッドのせ」「フリカッセのシュー皮詰め」「キャロットラぺと赤キャベツ、カリフラワーの酢漬けの三色盛り」「タルトタタンもどき」「フロマージュのブルーベリーソースがけ」。真ん中のカップは「マッシュポテトのチップス添え」、奥に見える飲み物は「自家製ジンジャエール」となっている。

 

ポテトにはクリスマスカラーのパプリカパウダーが振られているが、クミンやナツメグも用意し「味変」の《一種合成》を愉しんでほしいとニコリ。ジンジャエールは高知県の生姜生産者さんから送られてく有機生姜をつかって手作りしたもの。「とっても簡単にできるんです!」と嬉しそうに作り方を説明してくれた。

 

フリカッセ(fricassée)は「白い煮込み」を意味するフランス定番の家庭料理だそうだが、こちらもひと手間もふた手間もかかっていた。練馬の生産者さんの畑で練馬ダイコンを収穫し、「雪」に《見立て》るために家でひたすら丸くくりぬいて下ごしらえをしたという。それを家から抱えてきたフライパンを使って玉ねぎやきのこやチキンとともに煮込み、生クリームを加えてさらにコトコト。本楼中にいい香りが漂った。

 

▲コロコロと丸く見えるのが雪に見立てた大根。練馬ダイコンは長いので、皮をむくだけでも大変だったようだ。ちなみに、キャロットラペに使った人参は馬込三寸ニンジンで、練馬ダイコンとともに「江戸東京野菜」として知られる。マキコは野菜ソムリエプロや江戸東京野菜コンシェルジュなども手掛ける「食と農のコーディネーター」として活躍している。

 

▲料理が運ばれてくると自然と拍手が起こった

 

これほど手の込んだ料理、そのお味はどうだったのかというと…

 

「わあ、おいしい~~」

 

口に運ぶや笑顔になる参加者たち。フランス料理と聞くとなんとなく敷居高く感じるが、本楼で普段着でいただくフランスの味は想像を上回る御馳走だった。

 

▲(上)おやつにヌガーまで用意。もちろんマキコの手作りだ。中には「柿の種」が隠れていたが、意外や意外、甘じょっぱくてとてもおいしい!(下)スタッフの分まで食事を用意してくれ、おもいがけずおもてなしを受けてしまった。「えっ、こんなにおいしいの!?」スタッフ一同、次から毎年参加しようと心に決めた。

 

あまりにもおいしく愉しいエディットツアーだが、いまのところ年末だけのスペシャル開催ということになっている。次回の予定は1年後。ただし、マキコに会えるチャンスは意外にもすぐにあるのでお知らせしておこう。

 

★その1★

2024年1月10日(水)20:00~21:30、今年最初の学校説明会をマキコがナビゲートする。オンラインなので料理は出ないが、世界中どこからでもアクセス可能、参加費も無料だ。イシス編集学校に興味がある方のみならず、マキコ・カジョリーヌに一目会いたい方はぜひお申し込みを。

【無料・オンライン】1/10(水)20時 イシス編集学校 学校説明会を開催します

 

★その2★

噂ではマキコの料理企画(動画配信?)が今年はじまるとか。いったいどんな内容なのか、どれほど過剰なのか、詳細はまだ謎だ。

 

***

 

ちょっとやりすぎで、なにかが過剰で、どこかに傾くカブキ者。出る杭が打たれがちの世の中で、出る杭を怖れぬイシスのカブキ者マキコ・カジョリーヌに、2024年も過剰に注目していきたい。

 

  • 福井千裕

    編集的先達:石牟礼道子。遠投クラス一で女子にも告白されたボーイッシュな少女は、ハーレーに跨り野鍛冶に熱中する一途で涙もろくアツい師範代に成長した。日夜、泥にまみれながら未就学児の発達支援とオーガニックカフェ調理のダブルワークと子育てに奔走中。モットーは、仕事ではなくて志事をする。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。