1000番ジャイアン――46[守]新師範代登板記 ♯14

2021/02/12(金)10:13
img CASTedit

 遊刊エディストでは「1000記事間近! 切り番ゲッターは誰だ?!」と盛り上がっているが、角道ジャイアン教室ではつい先日、切り番ゲッターが現れた。
 5日の23時57分、学衆から1000番めの投稿がなされたのだ。しかもこんな嬉しい追伸が1001番目に投稿された。

 

記念すべき1000番を踏ませていただいてました! 角山師範代とうねら~9 稽古1000回超 おめでとう!

 

 単純計算で、9名全員が卒門したとすると最終的な投稿数は740回になる。この回数をはるかに上回るためには、彩回答の多さと稽古に常時励む人数が鍵となる。そう、稽古途中で1000回を超えたということは、大勢が熱心な稽古を続けている証なのだ。ジャイアンは諸手を挙げて学衆を讃えたい。

 特に1000回を超えるまでのラスト3日間は、番ボーに匹敵する賑やかさだった。
 きっかけのひとつは、2月2日の節分汁講だ。強度高めのオンライン稽古を体験したことで、編集が加速したのだ。
 汁講が終わり、数十分後に新しいお題を出題した時点で、投稿数は949だったのだが、ここからが圧巻だった。3日間の総投稿数は50超。教室のファーストペンギンの第一声を皮切りに、9人全員の声が鳴り響いた。
 
 ジャイアンにとって、中でも嬉しかったのは、この3つの声だ。

 

思いつかなかったので、先にこちらを回答します

 

 誰もが気の利いた回答を出したいと思う。そんな中、「これは苦手だ」と発言するのは勇気がいる。結局、言葉にできず、躓いたまま稽古から遠ざかる。そうした学衆は少なからずいる。
 でも声をあげてくれた。師範代はもちろん、「待ってました!」と駆けつける。

 

●●の意味が分からなく、お助け願いたいです!

 

 角道ジャイアン教室では、根幹を揺るがす質問から(苦笑)、単純なものまで、頻繁に質問が飛び交う。
 これも師範代にとって非常に嬉しい。質問への回答は、他の学衆へのアドバイスにもなるし、そもそも「問い」によって場が動き出すからだ。
 編集稽古の神髄は「問い」にあるとジャイアンは考えている。充実していると感じた時の稽古を振り返ってほしい。自分の中で問いを立てて取り組んでいたのではないか。

 

“仮留め上等!”というアドバイスで、腕のしなりがよくなりました

 

 節分汁講のゲスト講師、川野貴志師範は、破の秘訣として「師範代を使い倒せ」とアドバイスを送った。一行でもいい。仮留めでかまわない。まず投げよ、と。さすれば師範代からまたボールが返ってくる。このラリーこそ破である、と。
 これに感化された学衆たちが、仮留めのコツを掴みつつある。指南が返ってくる前に彩回答する学衆も出てきている。進破を決めた学衆たちが、すでに破を見据えて稽古を始めているのだ。

 

 だがこうしたエピソードから、生真面目な稽古の姿を想像してもらっては困る。角道ジャイアン教室の稽古は「遊び」に満ちている。
 例えばくだんの1001番目の投稿に記された、「うねら~9」に気づかれただろうか。
 年末に「うねり胴鳴り九重山」というキャッチフレーズが誕生したのだが、ここからさまざまな教室異名が派生しているのだ。「九重衆」というのはかわいいほうで、「うねり団」「うねうね隊」「飢えラー衆」「ザ・ウネラーず」……と、学衆によって異名が増え続けている。自由自在の異名同様、回答も跳び回っている。まさに遊び放題。

 

 こうなったらジャイアンも負けていられない。勝負だ。
『枕草子』の指南では、<『枕草子』ジャイ子流現代語訳>を放り込んだ。現在は、マツコと寅さんがジャイアンになり替わって指南している。指南もやりたい放題だ。

 

 そんなんでいいのかって? いいに決まってるじゃない。だって編集は遊びから生まれるんでしょ、違う? アタシの好きにさせてもらうわ。

 

▲甲骨文字の「千」。『字通』によれば、千は「人声」ともいう。人の声が重なり千となる。「ぼ~ぇ~~」×1000だ。

 

◆バックナンバー

ああ、それでもジャイアンは歌う――46[守]新師範代登板記 ♯1
ジャイアン、恋文を請い願う――46[守]新師範代登板記 ♯2
ジャイアンとコップ――46[守]新師範代登板記 ♯3
ジャイアンの教室名 ――46[守]新師範代登板記 ♯4
ジャイアンは教室とともに――46[守]新師範代登板記 ♯5
ジャイアンの1週間――46[守]新師範代登板記 ♯6
ジャイアン、祭の後――46[守]新師範代登板記 ♯7
ジャイアンの聞く力――46[守]新師範代登板記 ♯8
汁講ぞ、ジャイアン――46[守]新師範代登板記 ♯9

ジャイアン駅伝――46[守]新師範代登板記 ♯10

ジャイアンの破語り――46[守]新師範代登板記 ♯11

ジャイアン五箇条――46[守]新師範代登板記 ♯12

節分とジャイアン――46[守]新師範代登板記 ♯13

  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

  • スコアの1989年――43[花]式目談義

    世の中はスコアに溢れている。  小学校に入れば「通知表」という名のスコアを渡される。スポーツも遊びもスコアがつきものだ。勤務評定もスコアなら、楽譜もスコア。健康診断記録や会議の発言録もスコアといえる。私たちのスマホやP […]

  • フィードバックの螺旋運動――43[花]の問い

    スイッチは押せばいい。誰もがわかっている真理だが、得てして内なるスイッチを探し出すのは難しい。結局、見当違いのところを押し続け、いたずらに時が流れる。  4月20日の43期[花伝所]ガイダンスは、いわば、入伝生たちへの […]

  • 【多読アレゴリア:勝手にアカデミア】勝手に映画だ! 清順だ!

    この春は、だんぜん映画です!  当クラブ「勝手にアカデミア」はイシス編集学校のアーキタイプである「鎌倉アカデミア」を【多読アレゴリア24冬】で学んで来ましたが、3月3日から始まるシーズン【25春】では、勝手に「映画」に […]

  • 【多読アレゴリア:勝手にアカデミア③】2030年の鎌倉ガイドブックを創るのだ!

    [守]では38のお題を回答した。[破]では創文した。[物語講座]では物語を紡いだ。では、[多読アレゴリア]ではいったい何をするのか。  他のクラブのことはいざ知らず、【勝手にアカデミア】では、はとさぶ連衆(読衆の通称) […]

  • 【多読アレゴリア:勝手にアカデミア②】文化を遊ぶ、トポスに遊ぶ

    「鎌倉アカデミア」は、イシス編集学校のアーキタイプである。  大塚宏(ロール名:せん師)、原田祥子(同:お勝手)、角山祥道(同:み勝手)の3人は、12月2日に開講する【勝手にアカデミア】の準備を夜な夜な進めながら、その […]

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。