ジャイアン、祭の後――46[守]新師範代登板記 ♯7

2020/12/04(金)10:01
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 怒濤の番ボー祭りが終わった。
 嬉しいことに、わが角道ジャイアン教室の面々は、3倍辛口モードのジャイアン指南も喜んで受け入れ、取り憑かれたように彩回答に励んだ。教室での番ボー関連のやりとりは全体で98回を数えた。9人全員がエントリーを成し遂げたことを、素直に誇らしく思う。
 期間中は毎朝、<勧学会>より、ヒント&激励の「ジャイアンVOICE」を届けた。機を見てその日の朝、内容を決めていたのだが、実はひとつだけ何日も前から用意していたのに、届けなかった手紙がある。

 

角道ジャイアン教室のみなさん
おはようございます。

 

番ボー祭り、真っ只中ですね!
今日は師範代の学衆のころのお話を少々。

 

みなさんの中にも「彩回答」がしっくり来ない方がいるかもしれません。
何を隠そう、師範代もそうでした。
学衆時代の番ボーを改めてチェックしてきたのですが、彩回答はたった2回。
忙しさを理由に、形だけの彩回答を返して、済ませていました。
エントリーもほとんどが最初の回答からです。
ところが、教室に10回も彩回答をした仲間がいました。
「よくやるよ」と傍目から見ていたのですが、いざ別院での講評で、評価されたのは10回彩回答の仲間でした。
彩回答によって回答が磨かれたんですね。
師範代にもその変わりようがわかりました。
そうやりきったんです。


では自分は?
あの時なんでいい加減だったんだろ。
なぜやり尽くさなかったんだろう。
この時の悔いが、師範代の中にはずっとあります。
アホな後悔です。
そして師範代は、そんな後悔をみなさんにしてほしくない。


さあ、いきますよ!
とことん付き合います。
一緒に走りきりましょう!

 

角山祥道@角道ジャイアン教室

 

 お祭りの間中、ジャイアンの頭の中をずっと占めていたのは、この時の「後悔」だ。フラジャイルや不足と言いかえてもいい。どうやったら彩回答にのってくれるか。ラリーの面白さに気づいてくれるか。七茶の「charm」に意義を見いだしてもらえるか。
 あの時足りていなかったことを、師範代になって埋めている。

 

 ハハハハハ。
 考えてみれば模範的な学衆ではなかった。取り柄はスピードだけ。型の理解もいい加減、振り返りも適当。お題に何度もケチをつけた。不良学衆である。そう、「不足」だらけなのだ。
 今期の登板師範代の中には、エントリーすらしなかったヤツもいる。何週間も稽古から逃げ出していたヤツもいる。どっこい、そういう不足だらけの師範代の教室は、番ボーで大いに盛り上がった。
 
 心配は杞憂に終わり、結局この手紙はお蔵入りとなった。角道ーズの熱意は、ジャイアンの杞憂など蹴飛ばし、師範代の「不足」の穴を彩回答で埋め戻した。なんのことはない、学衆たちは師範代のはるか先を走っていた。
 
 祭りの後、ひとりの学衆から彩回答が届いた。
 そこには「これは角道ーズだけへの回答です!」と書かれており、稽古や指南の様子が、お題に沿って一種合成されていた。

 

 おい、俺を泣かすとはいい度胸だな。

(2020.12.4)

 

▲教室での番ボーのやり取りをそのまま、光彩に変換してみる。9つの山が美しい。

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  • 角山祥道

    編集的先達:藤井聡太。「松岡正剛と同じ土俵に立つ」と宣言。花伝所では常に先頭を走り感門では代表挨拶。師範代登板と同時にエディストで連載を始めた前代未聞のプロライター。ISISをさらに複雑系(うずうず)にする異端児。角山が指南する「俺の編集力チェック(無料)」受付中。https://qe.isis.ne.jp/index/kakuyama

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コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。