ISIS 20周年師範代リレー [第40期 後田彩乃 物語ることは生きること]

2021/11/04(木)17:30
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2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2020年6月に20周年を迎えた。第45期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、20年のクロニクルを紹介する。

 

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編集工学を学ぶ上で「日本という方法」は欠かせない。2017年11月、松岡正剛校長は田中優子先生との対談本『日本問答』(岩波書店)を刊行した。編集工学者と江戸文化研究者が日本を問答しあい、日本に問答をふっかけた一冊である。その頃、日韓間では慰安婦問題が再燃し、アメリカとアラブ諸国の間ではエルサレムの首都承認をめぐり緊張状態がつづいていた。

 

ここで注目したい編集術が「物語」である。物語はこうした対立や不和を恐れない。なぜなら「調和→不調和→新たな調和」が物語の基本であり、既にして物語の型の中に問題や負が組み込まれているからである。物語は、新たな可能性を生むイノベーティブな方法なのだ。

 

イシス編集学校で「物語」といえば、後田彩乃師範代である。「物語ること」と「生きること」とが分かちがたいという後田師範代は、[破]の学衆時代に物語で“アリスとテレス大賞”を受賞。師範代となってからは言霊の力で指南に命を吹き込み、学衆からはその一つひとつが「作品のよう」と形容される。物語へのゆるぎない確信と言語感覚が評価され、2020年には物語講座の改編メンバーに抜擢。編集力の発揮ぶりから「物語工学できる異能なる物語姫」と呼ばれた。

 

後田師範代は他にも「図解の女王」「モーラの達人」「感門デジタルチームの先導者」など、数々の異名をもつ。2021年秋からは物語講座で師範代として指南に腕を振るう。績了をむかえる来春には、また新たな「後田ミーム」が語り継がれているに違いない。

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

守破ともに、境にあった40期。

守では、冨澤学匠のご体調の悪化をうけて康代学匠「代」へ、また富澤道匠へ。

破の歴史であった木村学匠の最後の期、翌期から原田学匠、そして木村月匠へ。

ことのは結界教室では、物語編集術の終盤に学衆さんが不慮の事故で亡くなり、「安全な教室」の底にあいた裂け目をゆくなかで、編集工学と物語の根源的な力を体感していました。

 

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境の期。

守の道の陽なた翳り、康らの鈴は形代に響く。

破の木、月に成るとき初心と猛者と集いて嵐。

大阪の地震、西日本豪雨、学衆の不慮の事故、

人と自然と生と死と雨土風はめぐりつぐ。

意伝子をのせる守破の場、

両学匠のうつろいに境こえ

未知と記憶のまにまに。

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>これからメッセージ>

千々に蒔かれた種が、マージナルの産土に展くよう、照応し合う結びのネットワークを!

 

ことのは結界教室 後田 彩乃

 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

〇『日本問答』とセットで読みたい

1653夜:田尻祐一郎『江戸の思想史』

 

…2017年10月23日

◎コロナ時代の必携書

1655夜:石弘之『感染症の世界史』

…2017年11月10日

⦿松岡校長の「工学発想の起源」

1658夜:トマス・リッド『サイバネティクス全史』

…2017年12月20日

Designed by 穂積晴明

 

 

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。