ISIS 20周年師範代リレー[第25期 小坂真菜美 「胸の津波」を引き受けて]

2021/08/04(水)09:00
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第25期小坂真菜美

2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2020年6月に20周年を迎えた。第45期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、20年のクロニクルを紹介する。

◇◇◇

2011年3月11日午後2時46分、東北地方の三陸沖を震源地とする東日本大震災が発生。地震・津波の影響による福島第一原子力発電所の事故も判明し、連日連夜、「想定外」「未曾有」「メルトダウン」の文字が日本中を飛び交った。

震災翌日の3月12日、この日はイシス編集学校24[破]の「伝習座」が開催され、なんと1人を除いて全員が駆けつけた。さらに翌13日は「感門之盟」が予定されていた。だが、やむなく中止。創立以来10年間、27回に及ぶ「感門之盟」の中止は初めてのことだった。

 

それから1か月後の第25期[守]、松岡正剛校長も驚くほどの編集工学への熱量と技量を合わせもち、奇しくも地震工学の研究者であった小坂真菜美が師範代として登板した。教室名は「仮留綸子教室」。

 

小坂といえば、今や「[離]の人」「方法の人」「松岡正剛を継ぐ編集工学者」というふうに、もしかしたらすこし近づきがたい印象があるかもしれないが、そんなことはない。「仮留綸子(かりどめりんず)」のネーミングのように、繊細でチャーミングなところが実は持ち味。

 

当時、校長がしきりに漏らしていた「胸の津波」という造語にも多情多感に察知していたことだろう。今ならそのフラジリティは、たとえば「一生の離」で小坂別当師範代の火元指南を受ければ、灼然炳乎に違いない。

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

皆が震災による創(きず)を抱えた状況で始まった稽古。かなしさの闇に呑み込まれそうになっても、教室で交わされる誠実な言葉と編集工学の可能性が灯となって辿り着くべき先へ導いてくれました。小さな教室が世界の相似なモデルであることに気付けた期です。

 

>これからメッセージ>

入門して十年経っても編集工学の奥深さに日々驚かされています。さらなる可能性との出会いが楽しみです。

 

仮留綸子教室 小坂真菜美

 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

〇3・11の5日後、番外録スタート!

1405夜:尾池和夫『新版 活動期に入った地震列島』

…2011年03月16日

 

〇「胸の津波」に煽られて

1416夜:工藤雅樹『平泉藤原氏

…2011年05月25日

 

Designed by 穂積晴明

 

 

  • 金 宗 代 QUIM JONG DAE

    編集的先達:宮崎滔天
    最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
    photo: yukari goto

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。