この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

「ミドルシニアのみなさんも遅いことはありません。ぜひチャレンジしてほしい」
この遊刊エディストに、四人の[守]師範たちがイシス編集学校を語るバナーが添えられている。ご覧になっただろうか?その中のひとり奥本英宏は、当時四十代半ばの企業経営者だった自分をこう振り返る。
「最近頭が固くなってきたかな。もう少し柔らかくしたい」
これがイシス編集学校の門をたたくきっかけとなった。
5月12日開講する55[守]講座に登板する師範代たちは、最後の指南トレーニングを終え、受講者(ここでは“学衆”と呼ぶ)みなさんを迎え入れるべく最終調整に入っている。『花伝所』にて師範代になるための七週間の険しい訓練をクリアし、ようやくここまでやってきた。さながらロケット打ち上げを待つ宇宙飛行士のようだ。そのなかで、今期、人生も師範代経験も豊かな三人が満を持して再登板する。
渋江徹(かけはしヒコーキ教室)は、トレーニングを終えた今の自分を何にたとえる?という問いに対し、「卵から生まれたばかりの海ガメの赤ちゃん。背中に学衆を全員のせて、竜宮城までお連れしたい」と、ピュアな姿勢を見せる。
山下雅弘(百禁タイムズ教室)の意気込みは、「師範代が学衆の庭にお邪魔していって指南をする、そういう気持ちをもって臨んでいきたい」。自身に引き寄せず、他者へのリスペクトを忘れない。
藤井一史(うたしろ律走教室)は、創守座を振り返るや、自身の振り返りだけでは覚束ないからと、仲間の師範代たちが綴った振り返りレポートを、編集の型を使って壮大な文量でまとめあげ再編集した。その作業を経て編集の手応えを感じたようだ。
なぜ二度目の師範代を務めるのか。
三者三様のちょっと謎めいた言葉やふるまいにもイシス編集学校の秘密が隠されている。“知”に分け入るほどに、既知の世界の狭さを知り、未知が果てなく広がっていく矛盾にぶちあたる。なお追いかけたくなる“知”がここにはある。世界読書奥義伝『離』をやりきった三人だからこそ初心に還り、謙虚さと愚直さをもって、新たな編集の冒険に挑みたくなる衝動に駆られる。
ミドルシニアの強みは、なんと言っても人生と社会経験の豊かさである。心のゆとりと包容力もある。ただ、“経験”という時間軸は、ともすると自分の既知の範囲内、価値観での思考にとどまりがちだ。
十代から八十代の幅広い世代、職歴もさまざまな受講者が集うイシス編集学校。ネット上の教室での相互編集によって、自身の既知も価値観も更新される“方法”がいっぱい詰まっている。思考が今以上に活性し、仕事にも暮らしにも活きてくる“方法”を手にすることができる。
「欲を言えば、もう少し早く入っていればよかった」
入門から十二年目の師範・奥本の心残りが静かにこだまする。今日も開講準備に余念がない三師範代。意気衝天な三様の背中を追いかけて、ミドルシニアのみなさん、かっこよく方法の宇宙へと飛び出してほしい。
ミドルシニアにとってイシス編集学校は、ずっと追い続けたい“青春”なのかもしれない。
アイキャッチ・文/若林牧子(55[守]師範)
◆イシス編集学校 第55期[守]基本コース まだ間に合う!募集中◆
日程:2025年5月12日(月)~2025年8月24日(日)
詳細・申込:https://es.isis.ne.jp/course/syu
イシス編集学校 [守]チーム
編集学校の原風景であり稽古の原郷となる[守]。初めてイシス編集学校と出会う学衆と歩みつづける学匠、番匠、師範、ときどき師範代のチーム。鯉は竜になるか。
乱世には理想に燃える漢が現れる。 55[守]近大番に強い味方が加わった。その名もハンシ。「伴志」と書く。江戸時代の藩を支えた武士のようであり、志高く新時代を切り開いた幕末の志士のようでもある。近大番が、 […]
週刊キンダイ vol.004 ~近大はマグロだけじゃない!~
マグロだけが、近大ではない。 「近大マグロ」といえば、全国のスーパーに並び、飲食店で看板メニューになるほどのブランド。知名度は圧倒的だ。その名を冠した近大生だけの「マグロワンダフル教室」が、のびのびと稽古に励むのもう […]
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「来週の会議、リアルですか?」 そんな会話が交わされるようになったのはコロナ以降のこと。かつて会議といえば“会議室に集まる”のが当たり前で、わざわざ「リアル」などと断る必要はなかった。 だが、Zoomなど […]
週刊キンダイ vol.001 ~あの大学がついに「編集工学科」設立?~
3年前の未来予想図が現実になった?! 大学の新学科として「編集工学科」が新設。 千夜千冊は2000夜間近、千夜千冊エディションは35冊目が発売。 EdistNightなう〜3年後、イシスは何を?(2022/02/25) […]
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
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2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。