春の京にて、師範代へ贈られた「ふみぐら」ーー【53破】先達文庫授与【85感門】

2025/03/09(日)14:30
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 「神話的にいうのならどんな橋も“天の浮橋”なのだ」と松岡校長は言った。丹後国風土記によると、“天の浮橋”のかけらが京都にあるという。校長の育った京の都での開催となった【53破】の感門之盟に、「ここ」と「むこう」を同時につくる橋を、架けて渡った師範代たちが揃った。先達文庫とは、師範代に今期の労いと感謝をこめて贈られる書のこと。破の師範代には、学匠のメッセージが入った本を2冊ずつ贈呈するのがイシスの感門之盟の慣わしだ。

 

 破天講に駆け抜けた【53破】の10人、それぞれの師範代に向けて、次はどんな芽が出るかを楽しみに選ばれた「種」でもある「書」。感門表授与の後、ネオ・バロックを目指して研鑽の場を築いてきた原田淳子学匠が、師範代ひとりひとりに手渡した20冊を、ここに紹介する。


◆上原悦子 師範代(アガサ・フィーカ教室)

『名作うしろ読み』 (斎藤美奈子/中公文庫)
『吾輩はライ麦畑の青い鳥』 (斎藤美奈子/中公文庫)


 

◆内村 放 師範代(カミ・カゲ・オドリ教室)

『甘さと権力』 (シドニー・W.ミンツ/ちくま学芸文庫)
『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』 (北村紗衣/ちくま文庫)


 

◆織田遼子 師範代(世界にダブルページ教室)

『砂のように眠る 私説昭和史1』 (関川夏央/中公文庫)
『家族の昭和 私説昭和史2』 (関川夏央/中公文庫)


 

◆菅原誠一 師範代(なんでもデコトラ教室)

『いま、地方で生きるということ 増補新版』 (西村 佳哲/ちくま文庫
『ひとの居場所をつくる ランドスケープ・デザイナー田瀬理夫さんの話をつうじて』 (西村 佳哲/ちくま文庫)

 

◆大澤実紀 師範代(幕をあけます教室)

『新・建築入門』 (隈研吾/ちくま学芸文庫)
『ぼくらの近代建築デラックス!』 (万城目学・門井 慶喜/文春文庫)

 

◆青井隼人 師範代(ラップ多義る教室)

『言語が違えば、世界も違って見えるわけ』 (ガイ・ドイッチャー/ハヤカワ文庫)
『よくわからないけど、あきらかにすごい人』 (穂村弘/毎日文庫)


◆笹本直人 師範代(声文字X教室)

『市場の倫理 統治の倫理』 (ジェイン・ジェイコブズ/ちくま学芸文庫)
『経済の本質―自然から学ぶ』 (ジェイン・ジェイコブズ/ちくま学芸文庫)

 

◆新井隆子 師範代(触発ボタニカル教室)

『したたかな植物たち 秋冬篇』 (多田多恵子/ちくま文庫)
『したたかな植物たち 春夏篇』 (多田多恵子/ちくま文庫)


 

◆土田実季 師範代(イメージ・チューナー教室)

『翻訳教室』 (柴田元幸/朝日文庫)
『翻訳教室――はじめの一歩』 (鴻巣友季子/ちくま文庫)


 

◆奥富宏幸 師範代(潮目ディナジー教室)

『タイムバインド: 不機嫌な家庭、居心地がよい職場』 (A.R.ホックシールド/ちくま学芸文庫)
『だれのための仕事―労働vs余暇を超えて』 (鷲田清一/講談社学術文庫)


 編集用語辞典には、文庫は和語の「ふみぐら」に当てた字だとある。もともと大切な書物を保管する倉庫のことを指した。今日のこの文庫リストも、歴代の師範代たちに贈られた書とともに、イシスの知のアーカイブとなる。先達文庫発表の直後はネットショップで売り切れが発生することも。気になる本は早速チェックしよう。

  • 安田晶子

    編集的先達:バージニア・ウルフ。会計コンサルタントでありながら、42.195教室の師範代というマラソンランナー。ワーキングマザーとして2人の男子を育てあげ、10分で弁当、30分でフルコースをつくれる特技を持つ。タイに4年滞在中、途上国支援を通じて辿り着いた「日本のジェンダー課題」は人生のテーマ。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。