この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

こんにちは 軽井沢別想フロンティアの守り人モーリスでございます。
軽井沢別想フロンティアは、リアルとヴァーチャルを行き来しながら、どこにもなかった軽井沢を切り拓いていく倶楽部です。
●先行き不安な春を待つ季節
今の時期の軽井沢は、立春を過ぎたとはいえ最低気温はまだマイナス。朝夕は凍てつく寒さ。凩が吹き荒ぶ日もあれば、どっかりと雪が降り積もる日もあります。それでも一日ごとに少しずつ日が延びていくのを感じながら、ひたすら春を待つ季節が続きます。
この時期はいつも、今年どんな気候になるのかが心配です。
雪が例年より少ないけれど、水は十分流れて来るかしら
また今年も最高気温を更新するのかしら
あまり暖かくなって、病害虫が増えたりしないかしら
あぁ今年もまた野良仕事が始まる〜、めんどくさいなぁ。。。
3年前から軽井沢でこじんまりとですがお米づくりをやっているモーリスにとって、この季節は先行きを案ずる季節でもあるのです。
それでも3月中旬から4月の初旬あたりには、冬の「しんしん」とした空気も和らぎ、町のあちらこちらから「さわさわ」と春の音連れが聞こえはじめます。
川や田畑の用水路では、雪解け水が「さわさわ」と勢いを増し
大地の下からは、蕗の薹が「さわさわ」っと淡い緑色の顔を出し
やがて、木々の枝には辛夷の白い花が「さわさわ」と咲き乱れ
ついには南風に乗ってオオルリたちが「さわさわ」と舞い戻る
こんな風に軽井沢の春は、あちらこちらからポリフォニックに開いていく春なのです。
●たくさんの他者の目で、どこにもない軽井沢を拓く季節
さて、軽井沢別想フロンティアの2025春のテーマは「さわさわ・軽井沢」です。今回は3月初旬からの11週間を使って、皆さんには「さわさわ・軽井沢」から連想される「トポス」を探す旅をしていただきます。
ただひとつ正真正銘の旅、若返りのための唯一の水浴は、新たな風景を求めて旅立つことではなく、ほかの多くの目を持つこと、ひとりの他者の目で、いや数多くの他者の目で世界を見ること、それぞれの他者が見ている数多くの世界、その他者が構成している数多くの世界を見ることであろう。
ープルースト『失われた時を求めて』ー岩波文庫
旅のお供は、一冊の本と皆さんの想像力のみ。
トポスに合わせて選び読み込んだ本が、皆さんにひとりの他者の視点を与えてくれます。そして、このシーズンに集まった仲間たちの数多くの他者の目も通して、お互いが見出したトポスを深堀りしていきます。
本を重ねることで新たに見えてきたトポスの別様についてオンラインで語り合ったり、お互いのトポス3つを巡る紀行文を書き、その繋がりに新たな物語を見出したり。
さらに2024冬「しんしん・軽井沢」では、最後にみんなで軽井沢に集合して、それぞれのトポスをリアルに巡って五感で味わう、別想フロンティアツアーの企画も進んでいます。
これは毎シーズンの恒例行事となるのか? 乞うご期待です!
●みのりの秋へ、スタートを切る季節
2025春「さわさわ・軽井沢」の終了日は、なんと田植えの予定日と重なっています。秋のみのりの準備の季節でもあるのです。この偶然をどう活かそうか。モーリス今から想像を広げてワクワクしております。
皆さんも、軽井沢の春を告げる「さわさわ」に、耳をそば立てにいらっしゃいませんか? そしてたくさんの春のおとづれを聞きながら、誰もまだ知らない軽井沢を、一緒に別想してみましょう!
☆一番左がモーリスです。
●もっと知りたい軽井沢別想フロンティア
【多読アレゴリア:軽井沢別想フロンティア】軽井沢にべつそうを!
【多読アレゴリア:軽井沢別想フロンティア②】灰色の背広を脱ぎ捨てて
【多読アレゴリア:軽井沢別想フロンティア倶楽部】別想の軽井沢で自分だけのトポスを深掘りしてみる
多読アレゴリア2025春「軽井沢別想フロンティア」倶楽部
【定員】20名
【申込】https://shop.eel.co.jp/products/tadoku_allegoria_2025haru
【開講期間】2025年3月3日(月)〜2025年5月25日(日)
【申込締切】2025年3月7日(金)
【受講資格】どなたでも受講できます
【受講費】月額11,000円(税込)
※ クレジット払いのみ
※ 初月度分のみ購入時決済
以後毎月26日に翌月受講料を自動課金
例)2025春申し込みの場合
購入時に2025年3月分を決済
2025年3月26日に2025年4月分、以後継続
・2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。
・1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、そちらをご利用の上、2クラブ目以降をお申し込みください。
【お問合せ】allegoria@eel.co.jpまでご連絡ください
浅羽登志也
編集的先達:ミヒャエル・エンデ。企業経営支援や原稿書きの傍ら、ドラマーとしてセッションホストを務めたり、小規模ながらも野菜や米づくりを営む。座右の銘は、誰とも争わなければ負けることはない。
コメント
1~3件/3件
2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。