この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

イシス編集学校のエディットカフェの一角に、ひっそりと建つ寮がある。編集学校の温泉といわれる風韻講座を韻去した連衆の住まいであるこの半冬氾夏寮が今、熱い。
きっかけは十七座胡桃座ち組連衆によるメーリングリスト歌仙「ちと疾し」の巻のお披露目だ。小池師範より芭蕉「山里は万歳遅し梅の花」のポストカードが返礼として届くと、新年から胡桃座有志による歌仙「万歳遅しの巻」が始まった。寮生が見守る中、3ヶ月の旅路を経て無事に巻き終わる。
すると今度は寮内の有志を募って歌仙「さまざまの巻」が4月1日からスタートし、約2週間で挙句に到達。さらにゴールデンウィーク期間中、初夏之鉄火巻歌仙「湯をむすぶの巻」が超速で進行した。
歌仙は、前へ前へと進む文芸だ。外出自粛もなんのその、森羅万象に及ぶ言葉をつないで、連衆はたくさんの私に変身し、意外な情報とつながり、どこへでも自由に飛んでいく。
音頭を取るのは風船の空こと全然さん(41守前禅全然教室・小原昌之師範代)。「イシス20周年にちなみ、20歌仙が巻かれるやう企画したい」と高い志を掲げる全然さんが湯守として采配をふるう秘湯に、寮内が湧いている。湯あたりしないように、振り返り講を設けている心くばりにいたるまで編集づくし。寮生であれば、一度は浸かりたい湯である。
福澤美穂子
編集的先達:石井桃子。夢二の絵から出てきたような柳腰で、謎のメタファーとともにさらっと歯に衣着せぬ発言も言ってのける。常に初心の瑞々しさを失わない少女のような魅力をもち、チャイコフスキーのピアノにも編集にも一途に恋する求道者でもある。
2025年4月5日、伝習座に続き、55[守]纏界式が行われた。先日の感門之盟の冠界式で真新しい教室名を手にした師範代は、教室名をコンパイル&エディットして世界観を深め、A4一枚に教室のイメージを凝縮したフライヤーを作成す […]
ちょうど10年前、[離]の太田香保総匠のピアノの話に触発されて、子どもの頃に習っていたピアノレッスンを再開した。そのことを松岡校長はことのほか喜んでくれて、何かの機会で会うたびに「最近どう、やってる?」と話しかけてくれ […]
黒の服に白色っぽいズボンのすらりとした眼鏡の若者が豪徳寺駅に立っている。頭文字A教室の笹本直人師範代だ。7月13日土曜日午後14時40分。事前の案内で時間だけ伝えて日付を忘れるというハプニングがあったものの、なんとかこ […]
関東地方が梅雨明けした日、53守の夜空に3つのオンライン汁講の星が輝いた。そのひとつが、第一回進塁ピーターパン教室汁講。約2時間のあいだに5人の学衆が出入りした、自由な往来の汁講である。総山師範代は、あらかじめ組んでい […]
53期[守]師範による「数寄語り」シリーズの第二弾は、イシス歴16年目という福澤美穂子だ。着物もワンピースも着こなし、粋人と少女とを共在させる福澤は、10年前の師範代時代に学衆の回答に胸キュンしたことも、昨夜の53守の師 […]
コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。