この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

ほんのれんラジオの最新エピソードが公開されました!
イシス編集学校で世界読書奥義伝[離]まで了えた4名(ニレヨーコ、おじー、はるにゃ、ウメコ)がお送りするほんのれんラジオ。
vol.21の問いは、「なぜ、わかりあえないのか?それぞれの物語を越えて」です。
今回は、ほんのれんオリジナル小冊子「旬感ノート」から、
ほんのれん編集部 編集長仁禮洋子(編集工学研究所チーフエディター)のまえがきを公開します。
▼異なる物語に橋をかける
なぜ人はこうもわかりあえないのか? 選挙や戦争といった国家の問題から、職場や家庭のいざこざまで。
近しく感じる人々のあいだでも、人はみな違った「物語」の中で生きている。
千野帽子『人はなぜ物語を求めるのか? 』(旬感本2/P.10)によると、
物語とは時間の流れの中で世界を把握するための、認知のフォーマットだ。
我々は「あの経験のおかげで(せいで)、今の自分がある」とか「人は死んだら、星になる」というように、何かしらの因果を結びつけて物語を紡ぐ。
物語はときに不合理な世界を生きぬくよすがになる一方で、思い込みや決めつけを産む足かせにもなりかねない。
私たちは、世界を、そして自分の人生を自分なりに解釈しながら、それぞれの物語を生きている。
「私の物語」を越えて互いの「わかりあえなさ」の淵に橋をかけるには、どうすればいいのだろう?
5冊の本をヒントに、物語の力を知り、異なる物語を受け止める方法を探索してみたい。
ほんのれんラジオVo.20 民主主義回を終えて/お題「選挙を何と言い換える?」名回答のご紹介!/芥川龍之介”藪の中”的な感覚ってない?/わかりあえないんじゃない、わかりあいたくない/わかるの2つの意味/まず自分のいる物語を考えるのがいい/物語という方法/企業の物語/ユスキュルの”環世界”/マダニが見ている世界って?/今井むつみさん 物語≒”知識の枠組み”,”スキーマ”,”思い込み”/これって編集学校のエディティングモデルっぽい/物語回路(人間の認知フォーマット)が側にいる/3歳~5歳の脳/アンパンマンをインストールする/千野帽子さん ストーリー=”人間が世界を、出来事のシークエンスとして把握した脳内表現である”/ストーリーテリングアニマル
オマケメモ 物語回路の話(物語を紡いでしまう回路が脳にある!)
物語=人間の認知に組み込まれたひとつのフォーマット。事象の前後関係で世界をみるという認知方法は3歳くらいに完成する、と言われている。
3歳前後に幼児期健忘→シナプスの刈り込み→パターン化→発話の構文が固定される→3~5歳 記憶が発生する
第一次物語回路(自分に起こったことに基づく物語回路)から第二次物語回路(借り物の物語、他の人の話から影響されて新しい物語をつくっていく)へ
- 『物語編集力 人を動かす。仕事をつくる。』松岡正剛監修 イシス編集学校構成 ダイヤモンド社 2008
▼今回のエピソードで登場した本はこちら
・『物語編集力 人を動かす。仕事をつくる。』松岡正剛監修 イシス編集学校構成 ダイヤモンド社 2008
▼「なぜわかり合えないのか? 物語を超えて」を考える
「ほんのれん」旬感本はこちらの5冊!
(1)『ストーリーが世界を滅ぼす─物語があなたの脳を操作する』ジョナサン・ゴットシャル(著) 月谷真紀(訳)
東洋経済新報社 2022
(2)『人はなぜ物語を求めるのか』千野帽子(著) 筑摩書房 2017
(3)『神話の力』ジョーゼフ・キャンベル&ビル・モイヤーズ(著)飛田茂雄(訳) 早川書房 2010
(4)『他者と働く─「わかりあえなさ」から始める組織論』宇田川元一(著)NewsPicksパブリッシング 2019
(5)『断片的なものの社会学』岸政彦(著) 朝日出版社 2015
ほんのれんラジオ、noteあります。
旬感ノート画像もご覧になれますので、ぜひフォローしてください。
テーマごとにまとめてありますので、復習にも便利です。
ほんのれん編集部
編集工学研究所×丸善雄松堂が提供する一畳ライブラリー「ほんのれん」の選書やメディア制作を手掛けるメンバー。関西弁で跳ねるデザイン知カンガルー・仁禮洋子(ニレヨーコ)、小鳥の風貌ながら知的猛禽類な山本春奈(はるにゃ)、昭和レトロを愛する果敢なコンパイル亀・尾島可奈子(おじー)、2倍速で情報収集する雑読チーター・梅澤奈央(ウメコ)ほか。ほんのれんラジオは毎週水曜更新中。ほんのれん編集部公式noteにこれまでのアーカイブを蓄積してます。https://note.com/honnoren/
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。