この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

数寄を、いや「好き」を追いかけ、多読で楽しむ「大河ばっか!」は、大河ドラマの世界を編集工学の視点で楽しむためのクラブです。
ナビゲーターを務めるのは、筆司(ひつじ)こと宮前鉄也と相部礼子。この二人がなぜこのクラブを立ち上げたのか?それは、物語好きな筆司たちが、過去の大河ドラマを編集工学の型によって紐解き、その魅力を分かち合いたいという思いからです。
物語マザー編に続いて、物語の5要素のうち、キャラクター、そしてナレーターに注目してみましょう。
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◆キャラクター
ステレオタイプを作り、ステレオタイプを壊してきた。それが大河ドラマ。豊臣秀吉、と聞いて竹中直人(「秀吉」1996年放送)や西田敏行(「女太閤記」1981年放送)がぱっと浮かぶのではないでしょうか。これぞまさに、ステレオタイプというもの。
と同時に、人物の新たな一面に光をあててきたのも、また大河ドラマなのです。1作目の「花の生涯」(1963年放送)では、主人公の井伊直弼の聡明さ、人間らしさを丁寧に描くことにより、「安政の大獄を強行し多くの反対者を弾圧した悪者」という従来のイメージを覆しました。「麒麟がくる」(2020年放送)では、なぜ明智光秀が信長に謀反を起こしたのか。むしろ光秀に理あり、と感じた視聴者も多かったに違いありません。
歴史における主役級の人物だけではありません。「黄金の日々」(1978年放送)では根津甚八演じる石川五右衛門が、また「鎌倉殿の十三人」(2022年放送)では佐藤浩市演じる上総広常が、強烈な死のシーンを通じて記憶に残っています。脇役もまた多彩な魅力を放っているのです。
◆ナレーター
「今宵はここまでにいたしとうございまする」。「武田信玄」(1988年放送)の語り、若尾文子演じる信玄の母・大井夫人の名台詞です。毎回、エンディングはこの言葉で締めくくられていました。実際の語りだけではなく、誰の視点でドラマが作られるか。それは歴史的事実を誰が、どのように見ていたかを明確にするものです。「花燃ゆ」(2015年放送)は、吉田松陰の妹・文(後に美和)の目から見た幕末、そして明治維新の物語でした。「おんな太閤記」(1981年放送)は、秀吉の妻・ねねの目から見た戦国時代。いずれも男性が活躍した(言い過ぎを承知で書くと男性ばかりが目立った)時代を、女性の視点で捉えることにより、教科書で知っていただけの歴史の一面だけではなく、歴史に豊かな表情を与えてくれたのではないでしょうか。
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多読アレゴリア「大河ばっか!」では、このように編集工学の視点から大河ドラマを深く読み解いていきます。クラブ内で語り合いながら、登場人物の成長や葛藤、物語に隠されたテーマを掘り下げ、大河ドラマに流れ込む豊かな支流を一緒に生み出していきましょう。どうぞお楽しみに!
多読アレゴリア「大河ばっか!」
【定員】20名
【開講日】2024年12月2日(月)
【申込締切日】2024年11月25日(月)
【受講費】月額11,000円(税込)
*2クラブ目以降は、半額でお申し込みいただけます。
1クラブ申し込みされた方にはクーポンが発行されますので、そちらをご利用の上、
2クラブ目以降をお申し込みください。
【開催期間】2024冬 2024年12月2日(月)~2025年2月23日(日)以後順次決定
お申し込みはこちらから
https://shop.eel.co.jp/products/detail/765
アイキャッチ画像:大河ばっか!×山内貴暉
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相部礼子
編集的先達:塩野七生。物語師範、錬成師範、共読ナビゲーターとロールを連ね、趣味は仲間と連句のスーパーエディター。いつか十二単を着せたい風情の師範。日常は朝のベッドメイキングと本棚整理。野望は杉村楚人冠の伝記出版。
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。