創守座、建立す――54[守]開講前夜

2024/10/10(木)11:54
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 脈動が始まった。
 9月28日、今まで講座の中だけで秘せられていた師範代の学びの場、「伝習座」が、178回めにして装いを新たに2つに生まれ変わった
 ひとつは、外部に開かれた「NEO伝習座」だ。イシスコミッションメンバー津田一郎さんを招いての“共に学ぶ”場が、新たな渦を起こしたことは、別の記事が詳しく触れるだろう。

 「伝習座」のもうひとつの側面、“師範代への伝承と継承”は今期、「創守座」として新たに立ち上がった。故事成語「創業守成」から二字取っての「創守」である。

 

唐の太宗は腹心に尋ねた。何かを創り出すことと、それを守ることと、いったいどちらが難しいか。
 ひとりは「創業(草創)」といい、ひとりは「守成」だと答えた。 これが「創業守成(創業は易く守成は難し)」という故事成語を生んだ(『貞観政要』)。新しく創り出すことは難しいが、それを守ることはもっと難しい、という意味だ。

 

 唐の太宗は「創業は易く守成は難し」と言ったが、[守]では、一様に解釈しない。「創守」はもっと多様で別様だ
 10月5日、第1回目の54[守]創守座で、鈴木康代学匠は、冒頭の挨拶で「創」は「創始」であり「創傷」であると切りだした。かつて松岡正剛校長は、創はキズだといった。「創とは、アーカイブ(倉)を刀(リットウ)で掻き回すこと」であると。

「創るということは、傷みや悲しみを伴う。キズを恐れず、私たちは[守]になっていく」(康代学匠)

▲冒頭、創守座の由来を語る[守]の康代学匠

 

 実は54[守]の指導陣たちは、事前に「創」と「守」のシソーラスを広げていた。

[創] はじめる、おこす、立ち上げる、あらわす、築く、きず、欠く、あく、裂く、繕う、築く、做る、創発、創造、創作、別様、関係、つくる、別様、つく(突く/衝く/撞く)、つつく、切実、一擲、一滴、建てる、立つ(立秋とかの意)、わける、+1(プラスワン)、結ぶ、足、壊す、born、気づく、ひらく、拓く、展く、啓く、立つ、建てる、生成

 「」は立ち上げることであり、そこをめがけてつくことであり、別様の歴史と自己を展くことであった。

[守] たもつ、続ける、囲う、綴じる、守備、捕手、ご加護、冥護、母、みる、型、倣う、したがう(従)、たてまつる(奉)、そう(則、沿)、よわし、ルール、みる(観る、見る)、手、重ねる、Protect、追う、継ぐ、接ぐ、受ける、もらう、承る、馳せ参じる、寄せる、借りる、綴る

 「」は続けることであり、倣い借り重ねることであり、いでいでいくことだった。

▲本楼の書架には、「創」「守」のシソーラスや関連千夜の一節が貼られた。

▲本楼の一角には、師範たちがしつらえた「校長の守と創の棚」。

 

  師範代と指導陣45名が第1回創守座という座を建立した。ここに集いし人たちは「創守」を掲げ、キズを恐れず、編集的なわたしになっていくのだ。

▲編集的自己になっていく54[守]の面々(撮影/小森康仁)

 

文・写真/角山祥道(54[守]師範)

アイキャッチ/阿久津健(54[守]師範)


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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。