ISIS 25周年師範代リレー [第48期 畑本ヒロノブ 深掘りをつづける編集工学の継続者]

2024/09/17(火)08:07
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2000年に産声をあげたネットの学校[イシス編集学校]は、2025年6月に25周年を迎えます。第52期の師範代までを、1期ずつ数珠つなぎにしながら、25年のクロニクルを紹介します。

 

◇◇◇

2021年の秋、世界は未だにコロナ・パンデミック禍のもとにあった。デルタ株につづいて、感染力の強い変異株「オミクロン株」が登場し、感染が世界的に再び拡大。オンラインやインターネットを活用したビジネススタイルや生活が定着してきた一方で、コロナ疲れによる停滞感、収束の兆しの見えない不安感があちこちに漂っていた。

 

このような閉塞感を打破するかのように、2021年秋の[守]師範代に名乗りをあげたのが、畑本ヒロノブ師範代だ。畑本師範代は、ゼネコンで働く土木系エンジニア。トンネル掘削に対するAI診断システム開発などに携わっていることから、松岡校長からは「いつもトンネリアン教室」という教室名を命名された。

 

トンネルづくりの道のりは長い。数ある工程の一つである掘削だけを切り出しても、1日で掘削できるのはせいぜい10メートルほどだという。日本最長の道路トンネルである山手トンネルの全長はおよそ18,600メートルだから、単純計算でも1,860日、266週間、5年超という、途方もない時間をかけてつくられていることがわかる。これは気合いや根性だけでは到底つづけることはできない。

 

畑本師範代は、「編集工学」という未知のトンネルを掘削しつづける実践者である。イシス編集学校のあらゆる講座を受講するのは当たり前。[守]講座は再受講をし、ポリロールも厭わない。2度目の[守]師範代ロールを担当した際には、多読ジムの冊師も兼任しつつ、遊刊エディストのJUSTライターとして速報記事の即日アップをさらりとこなした。あらゆるイベントも真っ先に申込をし、最前席で目を輝かせてメモをとる畑本師範代の姿があちこちで目撃されている。

 

「忙しい時ほど仕事を5倍に増やせ」という松岡校長の言葉を、まさに体現している畑本師範代。そのエンジンとなるのは編集工学を深め、完全に身につけたいという情熱だという。2024年の春から夏にかけては、52[破]「ダイモーン維摩教室」の師範代として守破あわせて3度目の師範代ロールを全うした。「トンネリアン」から「ダイモーン」(デーモン)へ教室名へ変化したように、編集工学の奥へ奥へと深掘りをつづける畑本師範代が、トレードマークのスーツとネクタイを脱ぎ去り、新たな編集的デモンストレーション(de-monstration = 内なるモンスターを表に出すこと)を果たす日も、そう遠くはないだろう。

◎師範代メッセージ◎


 

>あのときメッセージ>

ロシアがウクライナ侵攻の準備していた時期と重なります。資源やエネルギーの高騰化など、世界が混迷に向かう中で、報道の「図」の情報だけでなく、歴象データを交えた「地」となる背景情報を読み、「知」を動かす38の編集の型が重要になりました。

 

>これからメッセージ>

イシスの将来を託された編集人たちが松岡校長の面影を追いながら「渡」を越そうとしています。なんでも運べる舟であり、数多くのコンテンツを盛れる器であり、着脱自在な方形の衣裳である本たちと、校長直伝の多読術を使ってナイーブに交際したい。編集学校の中で葦の一本、魔の一片、そして雷の如き維摩の一黙になりたい。

 

いつもトンネリアン教室 畑本ヒロノブ

 


 

●あの日!あの時!千夜千冊!●

◯編集工学でひもとくネガティブ・ケイパビリティとは
1787夜 帚木蓬生『ネガティブ・ケイパビリティ』
…2021年11月16日

◎校長が年始めに贈る一冊
1791夜 オイゲン・ヘリゲル『禅と弓』
2022年1月10日

⦿世界は「ヴァージョン」でできている
1793夜 ネルソン・グッドマン『世界制作の方法』
2022年1月26日

▼ISIS 25周年師範代リレー
第48期 畑本ヒロノブ:深掘りをつづける編集工学の継続者
第47期 中村慧太:急成長する近大のハニカミ王子
第46期 角山祥道:ちょっと頼れる「映画に出てくる方の」ジャイアン
第45期 梅澤光由:編集工学の求道者
第44期 佐藤裕子:すわ、御一新!20年目のすさびぶり
第43期 阿曽祐子:どろんこ遊びのごとく学び遊ぶ
第42期 網口渓太:令和のイシス的バーチャルアイドル
第41期 山田細香:苦行を足場に、見晴台へ
第40期 後田彩乃:物語ることは生きること
第39期 内海太陽:スーツと袴と作業着と ビジネスと古武道の求道者
第38期 大塚宏:牛歩む野辺のひろしや後の月
第37期 山田泰久:編集学校NPOネットワークの先導役
第36期 藤田小百合:愛と気っぷで富山を編集王国に
第35期 福田恵美:圧倒的オラリティが織りなすネットワーク
第34期 奥本英宏:頼れる兄貴はマショウの男
第33期 竹内裕明:本家本元のISIS祭でビジネス編集
第32期 長田陽子:エディストの原型はこの人のもんどりにあり
第31期 敷田信之:義に厚く、知に熱い。野武士のようなメディアマン
第30期 竹川智子:編集工学で”知の倍返し”を
第29期 田端弥生:編集の国に住み着いたアリス
第29期 石原卓也:穏やかさに潜む一種合成の魅力
第28期 真武信一:編集工学はライフワーク
第27期 鵜養保:飄々と方法をぶつけ合う神出鬼没の実験者
第26期 川野貴志:至宝が照らすイシスの10年
第25期 小坂真菜美:「胸の津波」を引き受けて
第24期 渡會眞澄:境界を見つめるラディカル・ウィル
第23期 白木賢太郎:10周年に誕生したレジェンド教室
第22期 ゆう恵朱:世界各国から指南するザ・ナラジアン
第21期 大泉智敬:全身投企する師範代夫婦
第20期 松永真由美:編集を重ねる“感”チェロ奏者
第19期 浅羽登志也:鳴り止まないセッション
第18期 福嶋秀樹:黒革の手帖にしたためた編集的方法
第17期 古田茂:編集第一線で変革期を支える
第16期 大武美和子:暖簾の奥からのぞくウィットあふれる女将
第15期 塩田克博:編集バッカス一時代を築く
第14期 竹島陽子:難波モードで腕がなる
第13期 成澤浩一:一本芯が通った兄貴な師範代
第12期 平山智史:ビジネスを再編集する国際派
第11期 伊藤真由美:指南とは学衆をいきいきとさせるもの
第10期 保坂恭史:編集的自由に向かうビジネスマン師範代
第9期 土井内英子:2期連続で走り抜ける
第8期 鈴木元一朗:編集の型でトップをとったレジェンド
第7期 古川柳子:デジタル化時代の師範代登板
第6期 立岡茂:つらなる熱烈回答ツリー
第5期 島津昌代:教室横断!讃岐大汁講
第4期 堀口裕世:初の師範代面談を経て
第3期 武沢護:唯一の走破者
第2期 川崎隆章:一字一句うちこんだお題
第1期 山田仁:てんやわんやの船出

 

 

アイキャッチデザイン:穂積晴明・山内貴暉

 

  • 上杉公志

    編集的先達:パウル・ヒンデミット。前衛音楽の作編曲家で、感門のBGMも手がける。誠実が服をきたような人柄でMr.Honestyと呼ばれる。イシスを代表する細マッチョでトライアスロン出場を目指す。エディスト編集部メンバー。

コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。