ISIS waveで書き手もうずうず――チーム渦◎座談会 vol.2

2024/06/22(土)08:02
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 〝イシス編集学校と社会をつなげる〟を合言葉に、2023年3月から始まった、イシス編集学校受講生がエッセイの書き手となる「ISIS waveシリーズ」。

 「チーム渦」の面々――花伝所から遊刊エディスト記者に進んだ羽根田月香(月)、52[破]師範代として奮闘する柳瀬浩之(柳)、仕事と母のマルチロールをこなす吉居奈々、53[守]師範の角山祥道(角)――が、連載30回&アーカイブ化を記念して、これまでのISIS waveを語り直しました。

 座談会の第2回は書き手の「数奇」や「内省」にもぐります。

(※なお吉居は所用で欠席)


 

■■好きの力で飛び跳ねる

 

角:つづいては「数寄」での分類です。ここはカテゴリーとして分かり易い。
月:印象的だったのは〈好きこそものの〉という言葉がすぐに出てきたくらい、皆さん飛び跳ねているんです、文章が。

【好きこそものの】
11)コンパイルの海をゆく―乗峯奈菜絵

14)いちにちだけの喫茶店―三澤洋美

16)型が音楽を運んでくる―瀬尾真喜子

17)ライブを料理してみた―藤井一史

18)エレボタに魅せられて―中野渡有美

19)推し活は型で加速する―猿川博美

29)編集の方法は連句にあり―小原(濤声)昌之

柳:カフェ好きが高じて友人と喫茶店を作っちゃった三澤洋美さんとか「数奇」そのものでした。
角:この記事は柳さんが担当してくれたんですよね。柳さんはエディットツアーをやるような師範代ですから、ディレクションしながらリアルの編集が立ち上がったんじゃないですか?
柳:初稿から完成度が高かったですが、ではそういうことにしておきます(笑)。
月:喫茶店を作る過程で友人と意見の対立があったときに、編集の型を登場させていますね。しかも《地と図》の使い方がみごと。
角:《地》をズラすというね。そういう意味で型をリアルに役立てた好例です。余談だけど師範代でも地をズラす感覚をつかむのは難しくて、地の共有ができないまま学衆に指南をすると、好き嫌いや正誤判定になってしまうことも。
柳:今期52[破]の師範代として登板しているので、肝に銘じます。
角:トピックとしては、瀬尾真喜子さんの記事はJUST記者の福井千裕さんにディレクションを担当していただきました。他にも多読冊師の畑勝之さん近江ARSでも大活躍だった阿曽祐子さんなど、さまざまな方が「ゲスト編集者」として参加してくださってます。

月:じつはいろいろな人が関わってくれているのも、この連載の良いところですね。この【好きこそものの】では、エレボタの中野渡有美さんのエッセイ、は読者の反響が大きかったですね。
角:うん、バズってました。PVに加えイシスFacebookのシェアボタン数もダントツ。
柳:エレベーターボタンを20年観察しつづけ、「考現学」の今和次郎よろしく分類した人ですね。ここでも《地と図》が使われています。
角:ところで気づきました? 彼女のアイキャッチ画像に、あとからエレベータ―ボタンを貼り付けているんだけど。
月:えっ? 最初からこの画像がご本人から提供されたのでは?
角:違いますよ。背景が真っ白で味気なかったから僕が編集しました。海運マン神戸七郎さんのアイキャッチには波に船を浮かべてるし、アンパンチの松林昌平さんのは骸骨をトリミングして上から貼ってる。
柳:そんな細かい作業が(笑)。
月:「好きこそものの」がチーム内でも発動されましたね。「これからはアイキャッチ画像にも注目!」って書いておきましょう(笑)。

▲エレボタを切り抜いて背景に貼ってみた中野渡有美さんのアイキャッチ。

 

■■もぐって見方が深まる

 

角:ここの分類は、前述の中野渡さんのエッセイから言葉を借りて【内なる稽古】となりました。
月:編集をつかって外部と接続するというより、自身にもぐっていくイメージです。

【内なる稽古】
03)身体×言葉×音楽のインタースコア―松岡竜大

04)センセイのリバース・エンジニアリング-倉内祐子

06)木こりが手にした「5つのカメラ」―木田俊樹

12)既存の言語からの脱却―小林陸

22)方法の力で“サウナ”を再編集―束原俊哉

30)さらば、わかりやすいワタシ―中田ちひろ

柳:束原俊哉さんは、サウナに入るという単純な行為を[破]で学ぶ《5つのカメラ》を使って表現しました。こういう使い方は思いもつかなかった。ルーティンが一気に非日常化しました。
角:型を通したことで、自己と向き合う深度をもって記事が立ち上がりましたね。
月:編集術の力という点では、誰にでもすぐ真似ができて、かつ日常の見方が一気に変わるよというパワフルなメッセージでもありました。
角:ここの分類は〈身体性〉っぽいんですよ。音楽と言葉をインタースコアした松岡竜大さんも、編集言語について書いてくれた小林陸さんも、じつは身体性から方法を見ようとしている。編集と身体性のつなぎがエディストはちょっと弱くて、元野球少年の柳さんのようなスポーツに造詣が深い人に、もっと記事を書いてもらいたいですね。
柳:なるほど、がんばります(笑)

▲サウナーの束原さんはその後、【イシスの推しメン】にも登場した。

 

◎アーカイブ
【Archive】ISIS wave コレクション #1-30


この続き(3/3)は、明日お届けします。

 

構成・文/羽根田月香

レイアウト/角山祥道

  • エディストチーム渦edist-uzu

    編集的先達:紀貫之。2023年初頭に立ち上がった少数精鋭のエディティングチーム。記事をとっかかりに渦中に身を投じ、イシスと社会とを繋げてウズウズにする。[チーム渦]の作業室の壁には「渦潮の底より光生れ来る」と掲げている。

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コメント

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山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。