この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

Jamiroquaiのジェイ・ケイが、デヴィッド・ボウイ「Let’s dance」のパロディで「Lockdown」を歌っている。「マスクをつけてテレビでも見よう」と美声を聞かせるピンヒール姿の中年は、SNSで結構な話題となっている。Youtubeでは発表から一週間足らずで20万回再生を記録した。
コロナウイルスの影響で、パフォーマンス・カルチャーには辛い時代となってしまった。しかし、怯まずに新たな編集の契機としているユニークな才能は多い。エルトン・ジョンはビリー・アイリッシュやマライア・キャリーと組んで「お茶の間から中継する」ライブイベントを催し、ボン・ジョヴィは参加型コロナ対策ソング「Do What You Can」を発表した。
いずれのコンテンツも、撮影環境はアーティストの自宅や仕事場だ。機材やクオリティのレベルは流石に下がるが、むしろその生活感のあるオフショット性が人気を呼んでいる。個性的なプライベート空間は、視聴者にとっては刺激的に映る。
「セイゴオちゃんねる(松岡正剛事務所公式)」のTwitterでも、以前から「セイゴオの赤入れ」や「新刊を眺めるセイゴオ」といった、松岡正剛のオフショット写真・映像がいくつか上げられていた。その意図について仕掛け人の寺平賢司(松岡正剛事務所)は、「いや〜、松岡さんってほんと何でもコンテンツになっちゃうからさ。これからもどんどん狙っていきたいよ!」とスナイパーのような目つきで熱く語る。コンテンツは好意的に受け取られているようだ。
現在、そんな寺平は編集工学研究所の小森康仁(映像ディレクター)、穂積晴明(デザイナー/13離)とチームを組んで「きちんと編集された」映像シリーズも制作中。「Cut Up Books」と題された同シリーズは、松岡が本をテーマに自由に語る緩やかな組み立てだ。自著や監修本の編集意図をはじめ、千夜千冊では語られていない本の魅力や、松岡の日々がざっくばらんに「カットアップ」される。
初回は、新刊『日本文化の核心』(講談社現代新書)が取り上げられた。黒板二枚で図解しながら、『日本文化の核心』の核心をつく。すでに第1話はYoutubeにて公開中で、「柱」・「産霊」・「客神」などについて解説がなされた。万全な衛生管理のもと、意欲的なカタリ編集に挑戦している。
「内容は本で読んだはずなのに、全く新鮮に聞こえますね。これはオーディオ、ヴィジュアル、リテラル、それぞれの能力を総合した新たな読書体験かもしれません」収録に参加した若手スタッフは興奮気味に語った。同書については、全3回が順次投稿される予定だ。「Cut Up Books」の最新情報は、Youtubeのチャンネル登録をするか、「セイゴオちゃんねる」のTwitterをフォローされたい。
穂積晴明
イシス編集学校方源、編集工学研究所デザイナー、「おっかけ千夜千冊」の千冊小僧。『情報の歴史21』『知の編集工学 増補版』ほか、編集学校のあらゆるものをデザインするが、疲れ目に祟り目でたまに目にカビが生える。
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。