【花伝所スペシャルEdit Tourレポート】師範代モデルで「カワル」を体験!

2024/03/11(月)19:20
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花伝所の秘伝で何がカワル?
3/3(日)雛祭りの日、日差しが降り注ぐ午後、18名の参加者がオンライン・エディットツアーに集った。入門前の初心者から[守・破]を修了した学衆(受講生)まで相互に混ざりながら、編集ワークやレクチャー、突然投げかけられる「問い」に汗かきながら、あっという間の2時間を過ごした。

 

案内役は、40期の指導陣である花目付と師範たち、加えて花伝所を修了したばかりの次期師範代(編集コーチ)がサポート役として参加した。林朝恵花目付の進行でスタートしたツアーの模様をダイジェストでお届けしよう。

 

■自己紹介ワーク

吉井優子師範のナビゲートによる自己紹介ワークは、部屋に「ないもの」から語られる自己のプロフィールだ。三角がない、テレビがない、アート作品がない、太陽の光がない、等々、「ない」ものから、それぞれの注意のカーソル(アテンション)が向かった先が表れる。どうして「ない」のかという理由から、個々の趣味嗜好、仕事や事情、スタイルなど、その人の内外に「ある」何かが引き出されていく。

 

 

■「師範代の方法」レクチャー&インタビュー

中村麻人花目付は、「師範代の方法」をレクチャーやリアル問答を通して伝えていった。「編集(工学)とは?」「編集稽古とは?」「どうして編集稽古を続けているのか?」という根源的な問いからスタートし、世阿弥が著書『花鏡』で記した「離見の見」という視点、「相互編集」にも「型(モデル)」があり、それを師範代は方法として体得しているということを明かした。

 

■編集指南ワーク

メインコーナーとなる「指南ワーク」は古谷奈々師範と嶋本昌子師範が進行。参加者は編集学校で実際に使っている「お題」に回答してみるところからトライする。続いて、他者の回答を発見的に見ること、それを言葉にしてみることを試す。ただ漠然と見ているだけでは、指南にならない。そこで、3つのステップ、3A(アフォーダンス・アナロジー・アブダクション)を使って回答を見る、コメントをするということを実践してみる。

 

■師範代たちの花伝所体験とは?
エディットツアーのラストに設けられた質疑応答の時間に師範代たちが花伝所の体験を語ってくれたので紹介しよう。

土田実季師範代(からたち道場)
かつて[破]の師範代が、「[守]は遠足、[破]は家出」と見立てていたけど、私にとって[花]はキャンプです。普段暮らしている安全な家から飛び出して、森を彷徨い夜の怖さを知るような体験。普段なら異質なものは避けて通りたくなるけど、花伝所では、不思議なもの、気になるもの、わからないものから連想を広げ、自分も広がっていくような体験ができた。

橘まゆみ師範代(やまぶき道場)
式目を通す中で、自分の中にある面白いものがお題によって引き出される感覚があった。自分の内にあるものを型が見つけてくれた。他者のことを知るにはまず自分が何を考えているかを知ることが大事だとわかった。最初は色んな学びが大量に入るのでパニックにもなったけど、今は自分の考えが取り出しやすくなった。

廣田雅子師範代(やまぶき道場)
入伝する前も期中も「書けない、できない、時間がない」と不安と迷いでいっぱいだった。でも、できそうもないこと、何が正解だかわからないという壁が立ちはだかっても、師範代だったらどうするんだろうと思うと立ち向かうことができた。道場で魅力的に変わっていく仲間の姿を見て、自分も変わろうと思えた。

山口奈那師範代(むらさき道場)
何がなんだからわからない状態で始まったけど、絶対にひとりぼっちにならない。仲間や師範がいつも居てくれて、声をかけてくれるから、絶対に最後までやり遂げるぞと思えた。自信や不安があっても関係ない、やるかやらないか。私は、「たくさんの私」に出会うきっかけにもなり、考え方がガラリと変わった。

 

つい数ヶ月前まで葛藤しながら演習していた入伝生たちが、すっかり師範代らしく堂々と言葉を放っている姿を見て指導陣もグッと込み上げるものがあった。むらさき道場の花伝師範だった嶋本は自身の入伝生だった山口の言葉に思わずホロッときた。エディットツアー終了後、参加者からもぞくぞくと感想の声が届いた。秘伝のタレを味見はできたが、本当にマジカルな体験、カワル体験は花伝所に入ってからだということを実感してくれたようだ。花伝所の場でまた会えることを楽しみにしたい。

 

●この日、カメラを担当した森本康裕師範がひな祭りの飾りと松岡正剛フィギュアを撮影してこの日を祝う。

 


41期・花伝所は、2024年4月20日(土)にガイダンス、2024年5月11日(土)の入伝式からスタートになる。
定員は30名。詳細・お申し込みは下記URLから。
https://es.isis.ne.jp/course/kaden


 

  • 林朝恵

    編集的先達:ウディ・アレン。「あいだ」と「らしさ」の相互編集の達人、くすぐりポイントを見つけるとニヤリと笑う。NYへ映画留学後、千人の外国人講師の人事に。花伝所の花目付、倶楽部撮家で撮影・編集とマルチロールで進行中。

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。