この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

松岡正剛さんとデイヴィッド・ボウイは似ている。
と、ワクワクせずにはいられないこの一文から始まるエッセイ(♯4:いまになって『情報の歴史21』を読みながら)が昨日、『ele-king』のウェブサイトにアップされた。
松岡正剛とボウイの何が似ているのか。どう似ているのか。さらに「情歴」の魅力や可能性を語るプロセスの中で「編集(工学)とは何か」の核心に触れている。
こんな文章を書ける人は、野田努さん以外、そうはいない。
とにもかくにも野田さんのエッセイを読んでもらいたいのだが、ボウイ、イーノ、サン・ラー、ワイルド、ヘンドリックス、ディラン、ニーチェ、バロウズ、リンゼイ・ケンプ、野村克也、ヴェルヴェット・アンダーグラウンド、美空ひばり、マーシャル・マクルーハン、ザ・ビートルズ、スチュワート・ブランド、J.R.R.トールキン、マーク・ボランがぞくぞく登場し、それほど長くはない文章の中におびただしい情報量が圧縮されている。だが、不思議なことにすらすらと読めてしまう。まるで情報の歴史の魔法のように。まるで松岡正剛スタイルのように。
野田さんは36、7年前の情歴プロジェクトの立ち上げメンバーの一人でもあった(野田さんの担当は「縄文」だった!!!!!! 奇しくも「縄文」をテーマに語られた前回の情報の歴史を読むイベント安藤礼二篇を野田さんにもぜひご覧いただきたい!!!!!!)。エッセイでは、インターネットのまだ普及していない当時の制作風景が臨場感をもって語られ、「たしかにこれは編集力で作る本だった」と振り返っている。では、編集力とは何だろうか。天才のボランとボウイの編集を比べながら、野田さんは「「編集」は、天才でも作家でもないひとにとっては有益なメソッドになりうるだろう」と予見している。
エッセイの締めくくりには『情歴21』に、こんなエールも寄せてくれた。
誰もが思い描くディストピア物語ではない、前向きな未来への筋書きをここからどう描いていけるのか、そのヒントも『情報の歴史21』にはあるはず、と生涯一編集者の背中を見ながら20代を過ごしたぼくは思うのである。
もし、松岡正剛は知っているが、『ele-king』を知らないという人がいたら、『ele-king』とは「千夜千冊」ならぬ”千夜千曲”だと思ってくれればいい思う。『ele-king』では、ほぼ毎日のように格別なミュージックレヴューがアップされている。とはいえ、千夜千冊とは違って、野田さんが一人で書いているわけではなく、他に複数のライターさんがいて、充実のインタビュー記事やライブレポートも発信している。
じつは『情歴21』編集部にとっても『ele-king』は超絶必の貴重な情報収集源だ(野田さんと『ele-king』のエディターやライターの皆さんには、情歴編集部一員として、この場を借りて御礼を申し上げます!!!!!)。
<野田努さんプロフィール>
野田 努/Tsutomu Noda
1963年、静岡市生まれ。1995年に『ele-king』を創刊。2004年~2009年までは『remix』誌編集長。2009年の秋にweb magazineとして『ele-king』復刊。著書に『ブラック・マシン・ミュージック』『ジャンク・ファンク・パンク』『ロッカーズ・ノー・クラッカーズ』『もしもパンクがなかったら』、石野卓球との共著に『テクノボン』、三田格との共著に『TECHNO defintive 1963-2013』、編著に『クラブ・ミュージックの文化誌』、『NO! WAR』など。現在、web ele-kingとele-king booksを拠点に、多数の書籍の制作・編集をしている。
Info 01
⊕ ele-king ⊕
∈ Editor-in-Chief:野田努
∈ Editor:小林拓音
∈ Producer:水谷聡男
∈ URL:https://www.ele-king.net
∈ Recent publication:
『ele-king vol.32 特集:2010年代という終わりとはじまり』
Info 02
⊕ 情報の歴史を読む ⊕
∈ ゲスト:片山杜秀
∈ 日時:2024年3月19日(火) 19:30~22:00
∈ 参加費:リアル参加4,000円(税込4,400円)
オンライン3,000円(税込3,300円)
∈ 会場
リアル参加:本楼(世田谷区豪徳寺)
オンライン参加:お申し込みの方にZOOMアクセスをお送りします。
※リアル参加もしくはオンライン参加のどちらかを選択いただけます。
∈ 定員:リアル参加につきましては先着20名となります。
∈ 参加資格:どなたでもご参加いただけます。
∈ 参加特典:お申込者限定のアーカイブ動画あり(視聴期間:1カ月程度)
∈ 申込締切日:2024年3月18日(月) 12:00まで
∈ お問い合わせ:front_es@eel.co.jp
*『情報の歴史21』(書籍orPDF)をお持ちの方はご持参ください。
▶︎▶︎▶︎参加お申し込みはこちらから◀︎◀︎◀︎
「『情報の歴史21』を読む」第11弾「片山杜秀編」3月19日(火)開催。音楽を聴けば、歴史が見える!
金 宗 代 QUIM JONG DAE
編集的先達:宮崎滔天
最年少《典離》以来、幻のNARASIA3、近大DONDEN、多読ジム、KADOKAWAエディットタウンと数々のプロジェクトを牽引。先鋭的な編集センスをもつエディスト副編集長。
photo: yukari goto
「脱編集」という方法 宇川直宏”番神”【ISIS co-missionハイライト】
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。