この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

リカちゃん人形よりもその小さな靴に愛着を感じたり、消しゴムの削りカスをずっといじっていたり、牛乳瓶の蓋だけ集めたり、そんなことをしていた幼い記憶はないだろうか。「部分は全体を凌駕する」とは松岡正剛の言葉。少年は一本の車輪スポークで自転車の全体を知る。マレーネ・ディートリッヒの細い眉、藤田嗣治のおかっぱ頭、ジェームズ・ディーンの咥えタバコ。その人を象徴するものも、いつだって部分に集約されているのであった。
2024年1月25日に傘寿80歳を迎える校長松岡正剛を祝い、倶楽部撮家で「松岡正剛を構成する部分、部品、要素を撮影せよ」というお題を掲げてカメラを抱えた。部分から校長松岡を考え、解体してみようという試みである。今秋、倶楽部撮家の新メンバーとなった小野泰秀を加えて、メンバーそれぞれ想いをこめてシャッターを切る。参考にしたのは『雑品屋セイゴオ』「千夜千冊」などなど。「セイゴオ部品あり〼。」と題して、倶楽部撮家presents傘寿祝いをお贈りする。
お題
「これが松岡正剛をつくってきた」と思う「もの」を選び、校長松岡を構成していると考える《部分・部品・要素》を撮影せよ。
松岡正剛といえば、煙草、Vコーン、丸眼鏡など身の回りにある「もの」も想起されるが、ここに揃ったのは意外なものも多く、並べてみると校長のいまとむかしを行き来するような景色になった。どこかノスタルジックな漂いを感じるのは『雑品屋セイゴオ』を引いたせいか。いや、そうとも限らない。松岡自身がいつもどこかに懐かしさや切なさを抱えていて、解体しようと思うとそこに触れざるを得ないからかもしれない。
「傘寿祝い セイゴオ部品あり〼。」はイシス編集学校インスタグラム(@isis_editschool)でも同時展開中。
後藤由加里
編集的先達:石内都
NARASIA、DONDENといったプロジェクト、イシスでは師範に感門司会と多岐に渡って活躍する編集プレイヤー。フレディー・マーキュリーを愛し、編集学校のグレタ・ガルボを目指す。倶楽部撮家として、ISIS編集学校Instagram(@isis_editschool)更新中!
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。