この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

2023年もいよいよ年の瀬が迫ってまいりました。しゃんしゃん雪降る長崎から、編集工学研究所の社長・安藤昭子のコラム連載「連編記」の第四回をお届けします。
(社長コラム「連編記」は、「編集工学研究所Newsletter」で配信しています。Newsletterには、編集工学研究所のウェブサイトよりご登録いただけます。)
「連編記」では毎回、一文字の漢字を設定。この一文字から連想される風景を、編集工学研究所と時々刻々の話題を重ねて編んでいきます。
今回の漢字は、「情」。情報の「情」であり、情感の「情」でもありますね。
白川静さんの『字統』によれば、「情」について『説文解字』には「人の陰気にして、欲有る者なり」とあるそうです。陰気で、欲有る者? なんだかネバネバした印象ですね。その後、性を陽として情を隠とする考え方が漢代に広まり、やがて性を体に、情をその用とする性情論というものにつながっていくのだそう。「情」という字の元々は、情感や「心」に近かったようですね。
「情報」という言葉は、ご存知のとおり、20世紀になってから「information」の訳語として定着したもの。一説では「事情を報告する」の略語だったそうです(三省堂『大辞林』)。
この言葉が定まったときから、情報は「心」の面影をポケットに潜ませてきたのかもしれない。今回の「連編記」を読みながら、配達人はそんなことに思いを馳せました。
前説はこのへんで。では、どうぞ。
(「連編記」配達人 山本春奈)
「情」 この複雑な世界を巡るもの
2023/12/21
◆編集工学研究所 Newsletter「連編記」 → アーカイブはこちらからご覧いただけます。
◆編集工学研究所からのお知らせ:■『情報の歴史21』を読む 第九弾 鈴木健編」開催決定。 12月27日(水) 19:30~22:00 『なめらかな社会とその敵』の著者であり、スマートニュース会長の鈴木健さんをお招きして、『情報の歴史21』を読む 第九弾 鈴木健編」を開催します。 ![]() 知の最前線、情報技術の最前線、メディアの最前線で多岐に活動される鈴木さんは、どのように歴史と向き合い、「情報の歴史」を読み解いてこられたのか。 「『情報の歴史21』を読む 第九弾 鈴木健編」は、本楼会場およびオンライン配信での開催です。 ▼『情報の歴史21』を読む 第九弾 鈴木健編
2023年12月27日(水) 19:30~22:00 @編集工学研究所「本楼」/オンライン *申込締切日:2023年12月26日(火) 12:00まで *参加特典:お申込者限定のアーカイブ動画あり(視聴期間:1カ月程度) ■鈴木健さん率いるニュースアプリ「スマニュー」の新サービス『SmartNews+』で、 「ほんのれん」の連載がスタート! いま気になる「旬な問い」を、編集工学で深掘りする。編集工学研究所と丸善雄松堂が提供している毎月更新の一畳ライブラリー「ほんのれん*」が、ニュースアプリ「スマートニュース」の新サービス『SmartNews+』に連載を持つことになりました。 「ほんのれん」では、毎月の「旬な問い」と、問いを考えるための選書や冊子「旬感ノート」を導入者の皆様にお届けしています。 ![]() ■”本で対話”する一畳ライブラリー「ほんのれん」体験会を開催。 1月23日(火)・24日(水) 一畳ライブラリー『ほんのれん』は、「問い」と「本」の力を借りて「対話」を生み出すコミュニケーション・ハブ装置です。オフィスの共用空間、地域のコミュニティスペース、大学のキャンパス等で活用が始まっています。本を介することで思いがけない視点が引き出される。この不思議な対話体験「旬会」を、ぜひ感じてみてください。1月に本楼/オンラインで体験会を実施します。 ![]() ▼「旬会」体験会 日程:
2024年1月23日(火)10時~11時30分 @編集工学研究所「本楼」開催 2024年1月24日(水)10時~11時30分 @オンライン開催 *[本楼]開催では「ほんのれん棚」の実機をご覧いただけます。定員は20名、先着順とさせていただきます。 *オンライン開催お申し込みの方にzoomリンクをお知らせいたします。 みなさまのご参加をお待ちしております。 編集工学研究所・広報チーム一同
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安藤昭子
編集工学研究所 代表取締役社長
東京生まれ東京育ち。新卒で出版社に就職。書籍編集に従事するも、インターネット黎明期の気配に惹かれて夜ごとシステム部に入り浸る。javaを勉強し、Eラーニング・プログラムを開発。会社から編集者かエンジニアか選ぶよう言われ「どっちも」と言って叱られる。程なくして松岡正剛を知り、自分の関心が「情報を編集すること」にあったと知る。イシス編集学校に入門、守破離のコースを経て2010年に編集工学研究所に入社。2021年に代表取締役社長に就任。企業・学校・地域など、「編集工学」を多岐にわたる領域に実装・提供している。Hyper-Editing Platform[AIDA]プロデューサー、丸善雄松堂取締役。著作に『才能をひらく編集工学』、『探究型読書』。新芽、才能、兆し、出会いなど、なんであれ「芽吹き」に目がない。どこにでも自転車で行く。
安藤昭子コラム「連編記」 vol.11「膜」:心の風の通り道
こんにちは。編集工学研究所です。 「編集工学研究所 Newsletter」は、編集工学研究所を取り巻くさまざまな話題を配信するお便りです。代表・安藤昭子のコラム「連編記」では、一文字の漢字から連想される風景を、編集工学研 […]
安藤昭子コラム「連編記」 vol.10「型」:なぜ日本は「型の文化」なのか?(後篇)
「編集工学研究所 Newsletter」でお届けしている、代表・安藤昭子のコラム「連編記」をご紹介します。一文字の漢字から連想される風景を、編集工学研究所と時々刻々の話題を重ねて編んでいくコラムです。 IN […]
安藤昭子コラム「連編記」 vol.10「型」:なぜ日本は「型の文化」なのか?(前篇)
「編集工学研究所 Newsletter」でお届けしている、代表・安藤昭子のコラム「連編記」をご紹介します。一文字の漢字から連想される風景を、編集工学研究所と時々刻々の話題を重ねて編んでいくコラムです。 IN […]
安藤昭子コラム「連編記」 vol.9「世」:世間と世界のあいだで
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安藤昭子コラム「連編記」 vol.8「根」:足元の大いなる知性
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コメント
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2025-06-10
この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。
2025-06-10
藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。
2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。