フライヤー=旗を掲げよ――52[守]開講前レポート

2023/10/28(土)07:45
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 「旗」は古来、何かを指し示すものとしてあった。日本では旗(幡)は神を招き入れるものであり、古代イスラエルでは人々の集まる中心地に旗が掲げられた。古代ギリシャは都市ごとに旗にしるしを描き、戦国武将も海賊も、おのれの旗をあげた。


 [守]の師範代たちもまた、それぞれの教室に旗を掲げる。「フライヤー」という名の旗だ。師範代になってまずやることは、フライヤー制作なのだ。なぜか。教室の世界観をイメージで伝えるビジュアル、見る人の「注意のカーソル」をひきつけるキャッチコピー、守の講座や教室の魅力を伝えるボディコピー三位一体で、自分たちが向かう「」を示すためにほかならない。

 

 では、10月30日に開講を控える、52[守]の師範代たちは、どんな「旗」で学衆たちを迎えようとしているのか。
 18教室のフライヤーの中から際立ったものを、相部礼子、角山祥道の両師範が紹介する。

 

フライヤーが真っ先にはためく

大和丈紘師範代●ノート結索教室

相部:早さに目を見張りました。52[守]では、フライヤー制作のガイダンスを実施ししたのですが、終了後2時間も経たないうちに「一つ作ってみました」と初稿をアップ。初稿からすでに、蠢き出す情報の音が聞こえてくるようでした。
角山:完成形も遊び心満載です。現代社会を「ふきげんな検索」と見立て、「ゆかいな結索」=編集稽古と対にする。ビジュアルといい、この編集方針に貫かれていましたね。

 

教室模様がまなこに浮かぶ

高田智英子師範代●語部おめざめ教室

角山:案を提出するたびにビジュアルもボディコピーも変わりました。「捨てる」ことを厭わないのは、高田師範代の強みでしょう。
相部:手描きの目に注目しました。暗闇の中で大きな目が開くと、そこには学衆が集っている様子が。高田師範代には、もう教室の将来像が見えていますね。「編集稽古、目覚めろ我ら」という力強いキャッチコピーも、語部が民衆の心を振るいたたせるかのようでした。
角山睫毛が「ISIS」なのも隠れたポイントです。

 

かすかな声に耳をすませて

瀬尾真喜子師範代●即断ピアニッシモ教室

相部余計なものをそぎ落としたシンプルな線が力強いです。
角山:ビジュアルとしては非常にインパクトのある作品になりました。石井晴美師範代の変速シフト教室といい、町田有理師範代の校長バージョン教室といい、52[守]は、キレのいいビジュアルが揃いましたね。
相部:瀬尾師範代はフライヤーの制作過程で、「師範代になるとはどういうことか」という学びも得ていました。「フライヤーを作る理由」のひとつが、ここにありますね。

 

編集的自己の生まれる日

野崎和彦師範代●はじき・おはじき教室

相部:真ん中にどんとある「遊」の一文字に、「遊びをせんとや生まれけむ/戯れせんとや生まれけん」の今様が頭に浮かびました。稽古を遊びつくし、編集の世界に新たに生まれなおす体験をするんだ、という野崎師範代の強い意志を感じます。
角山:ソフトを駆使せずに手作業でやり尽くしたところに、「編集」のひとつの形をみました。望むらくは、もっとボディコピーをしっかり書いても……。

 

相部:フライヤー制作は多くの師範代にとって「未知」の体験です。しかし「仮留め」を恐れず、案をどんどん出していった師範代のフライヤーは、「こんな教室にしたい!」という意気込みも鮮明になりましたね。
角山:しかし、出来上がったフライヤーも、いってみれば「仮留め」。未知の学衆の出会いで、旗の色も形も変わっていくのでしょう。
相部:翻る旗の下、いよいよ52[守]の未知への旅が始まります。

 

文:相部礼子、角山祥道

アイキャッチ:掲載したフライヤーは、左上から順に、飯田泰興師範代/風月盆をどり教室、内村放師範代/カミ・カゲ・イノリ教室、大濱朋子師範代/白墨ZPD教室、新井隆子師範代/北方ボタニカル教室。

 


 

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コメント

1~3件/3件

山田細香

2025-06-10

 この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
 建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

山田細香

2025-06-10

 藤森は人間の生と死のプロセスをノートに書きつけ、霊がどこに行くかをずっと考えてきた。そして人間が死ぬ場所としてドンピシャの高さを見つけ出している。それが檜の1本柱の上に建つ地上4mの《徹》だ。春になると満開の桜の中に茶室が浮かび上がる。桜は死を連想させる。この高さの絶妙さを目の当たりにすると、美しさだけでなく恐怖さえも感じてしまうのだ。

堀江純一

2025-06-06

音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。