この日、セイゴオはどこから私達を見つめてくれていただろう。活け花の隙間、本楼の桟敷、編工研の屋根の上、地上15m付近の鳥の背中。低い所か、高い所か、感じ方は人それぞれだろうけど、霊魂がどこに遍在しているかを考えることと、建築物の高さは深く関係している。
建築家・藤森照信はいろんな高さに茶室を造ってきた。山から伐り出した栗の木を柱にした《高過庵》の躙口は地上6m。その隣には地面に埋まった竪穴式の《低過庵》がある。この「高過ぎ」「低過ぎ」と言えるその基準は何なのか。

8月某日、浦澤美穂は悩んでいた。
イシス子どもフィールド発行のZINE「あそぼん」に寄せる原稿のテーマを過去に作ろうとして頓挫したカードゲーム「お料理ポーカー」に決めたものの、どう展開して、オチをつけるか決めきれずにいたのだ。
(お料理ポーカーは食材名が書いたカード4枚と調味料名が書いたカード1枚をそれぞれドローし、よりたくさんのカードを組み合わせて料理が作れれば高ポイントというゲームである。)
そこで、「編集かあさん」こと松井路代さんとトークしてみることにした。
松井:ルールを読んで「このゲームで実際に遊べそうだな」と思いましたよ。浦澤さん的な挫折ポイントはどこだったんですか?
浦澤:役ですね。「このカードの組み合わせはこの料理、これ以外はポイントなし」って決めてしまうと自由度が少なくてつまらないかなと思ったのですけど、かといってどんな組み合わせもありにすると、「豆腐カレー」とかの扱いをどうしたらよいのかと考えてしまって。
「カレーに豆腐乗せることはできる、食べられる」と言われればまあそうじゃないですか。
松井:私はこのゲームで新たな料理が生まれる可能性を感じたんですよね。
引いたカードの材料で実際に料理を作ればいいんじゃないかなと。
浦澤:なんだかYouTuberっぽくなってきましたね。
実際作っておいしければポイントになるのかな。
松井:作ってみたいなと思いました。
浦澤:私は実際作るのはちょっと勇気がいります…(笑)
でも今お話ししていて、カードを引いたらその場にいるみんなで味を想像してみて、「アリ」と思ったらポイント、っていうルールでできるんじゃないかなと思いました。
松井:じゃあそれでやってみますか!
浦澤:原稿には松井さんとお話してみたら追加のルール案が出来た、実際やってみたらこんな風だったを書いてみますね。
カードを印刷して自宅の食卓に山札を作って、実際に引いてみる。
5枚のカードからなんとなくメニューが想像できたので、これはいけそう。
さて、これで原稿の完成形も見えてきたとカードを片付け始めたところで夫、小桝裕己氏が割り込んできた。
小桝:カードゲーム好きの俺としては、ちょっとまだ甘いと思うんだよ。
初めて聞いた情報であるが、続けてもらうことにした。
小桝:役の決め方はもっとルールを固めたほうが面白くなると思うよ。今のままだとどんな組み合わせでも「おいしいと思う」とごり押しできそうだから。
浦澤:じゃあ意見が分かれたら拳で決着をつけなよ。
小桝:違うゲームになってる!調理法カードを追加するってのはどうかな。煮る・焼く・生とか。
浦澤:「その調理法に合った食材か」っていう判断基準を加えられるのね。
でも引くカードが増えると煩雑になりそう。
「プレイヤーがその場でテーマを決める」ならアリかも。決める人は順番に回す。
小桝:いいと思う。テーマは料理のジャンルでもいいね。「洋食」「中華」とか。
浦澤:テーマが「和食」で調味料オイスターソース引いたら、そのターン終わるよ。
小桝:じゃあ手札がいまいちの時はカードを交換できることにしたら?1ターンで引き直せる枚数を決めて。
浦澤:なるほど、本家ポーカーといっしょだ。アリかも。…でもひとつ問題があって、「カードをひいて、おいしそうかで役になっているか決められそう」っていう締めでもうほぼ原稿書いちゃったのよ。
小桝:直せ直せっ。
浦澤:えー。
小桝:予定外のことも取り込むのが編集ってものだろう。
こうして、編集かあさんとのトークで「料理っぽさ」、小桝さんのカットインで「ポーカーっぽさ」が補強されて、頓挫したオリジナルゲーム「お料理ポーカー」が動き出した。
ルール・ロール・ツールの詳細、そして原稿がどんな「オチ」になったのかはぜひ子どもフィールド発行のZINE「あそぼん」で確認してほしい。
浦澤美穂
編集的先達:増田こうすけ。メガネの奥の美少女。イシスの萌えっ娘ミポリン。マンガ、IT、マラソンが趣味。イシス婚で嫁いだ広島で、目下中国地方イシスネットワークをぷるるん計画中。
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2025-06-10
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2025-06-10
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2025-06-06
音夜會の予習には『愛は愛とて何になる』(小学館)が是非ともおススメ。松岡校長も寄稿しています。
さらに、あがた森魚さんの映画監督第一作「僕は天使ぢゃないよ」は、なかなかの怪作なのでご興味のある方は是非どうぞ。
監督・脚本・主演・歌唱あがた森魚で、他にも横尾忠則、大瀧詠一、緑魔子、桃井かおり、山本コウタロー、泉谷しげる、鈴木慶一などなど無駄に豪華キャストなのに、なぜかヒロイン役が一般人(たぶん...)で、びっくりするほどのセリフ棒読み。さすがにこれはダメだろうと思いながら観ているうちに、だんだんこの子がいい感じに見えてくるから不思議。あがたさんの「愛の理想形」を結晶化させたような作品です。